京都府木材組合連合会

平成27年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業

一般社団法人京都府木材組合連合会

実施概要

(1) 一般流通する京都府産木材を使用した木造構造設計講座の開催
京都府の木材供給事業者が供給する一般流通材を用いた木造建築の推進可能な人材を養成するために、木構造を専門とする京都大学生存圏研究所 助教 北守顕久氏と、同研究所 研究員で、地域材利用建築の実績が多数ある一級建築士でもある南宗和氏を招き、日本の山林・林業の現状と木材活用の意義をはじめ、木材の性質をはじめとした基礎知識から一般流通規格、木構造の種類と解説などについての講習を開催した。
この講座は京都市「平成の京町屋コンソーシアム」主催の建築士向け講習会と連携した「木材・木造のキホン講座リレー開催」に位置づけられ、建築側への普及効果と今後の継続性がより見込まれるものとなった。
 
「木造建築のための木材のキホン」講習会
日時・場所 : 平成28年10月24日(月)京都大学宇治キャンパス(南部会場)
平成28年10月28日(金)福知山市武道館会議室(北部会場)
 
当日の様子
 
<京都府産木材で木造建築物を建てるためのマニュアル作成>
京都府、京都府立大学、京都大学 五十田 博 教授、一般社団法人木を活かす建築推進協議会地域リーダーの協力を得、「京都府産木材利用マニュアル」を作成することとなった。五十田教授が座長となり、京都府建設交通部、林務課、(一社)京都府建築士事務所協会、(一社)京都府建築士会、(一社)京都府建設業協会、(一社)京都府木材組合連合会から委員を招集し「京都府産木材利用マニュアル検討委員会」が設置され、現状における京都府産木材利用の課題を議論、マニュアルづくりの方針決定をした。
原稿作成を担った作業部会は、京都府立大学生命環境学部材料物性学 助教 神代 圭輔氏が座長となり、京都府、三重大学等をメンバーに、(一社)京都府木材組合連合会が各種調整を担い、計5回実施された。完成した冊子のタイトルは「京都府の木で木造建築物を建てるためのイロハ」となった。
京都府産木材利用マニュアル検討委員会
同作業部会
 
「京都府の木で木造建築物を建てるためのイロハ」表紙
 
(2)製材所・木材流通事業者向け経営改善および品質管理向上講座の開催
木材業界が斜陽産業と言われるようになって随分時間が経つが、業界の体質改善は世に後れを取っている事実は否めない。中小・零細であることで体制的に対応困難であることが原因なだけでなく、経営者、現場担当者に対して「方法」の情報提供とともに意識改善を促すことが必要がある。
そこで、公益財団法人 京都産業21にある「よろず支援拠点」(近畿経済産業局委託の中小企業意・小規模事業者ワンストップ総合支援事業によって設置された「相談窓口」)の「コーディネーター」小澤 慶男氏(本業は経営コンサルタント)の協力を得て、京都府内木材業者の調査を巡回調査を実施し、調査結果をもとに「経営改善セミナー」を開催した。また、セミナーでは木材業者をはじめとした事業所の省エネ(製造・管理コストの削減)診断事業を長年行い実績も豊富な京都府地球温暖化防止活動推進センターの協力も得た。内容、プレゼンともに伝わりやすい講演で、多くの木材業者から好評であった。
 
セミナー「木材業界の収益改善を探る」
日時:平成28年11月6日(日)
場所:京都府中小企業会館
巡回調査の様子
セミナー当日の様子
 
  
(3)製材所への人工乾燥機導入促進のためのセミナーの開催
経営改善を軸とし管理能力を向上させるねらいの(2)の事業であったが、経営改善をするためには、木材の品質改善と即納体制の整備というのは非常に重要な要素である。その対策のひとつとして、「人工乾燥機の導入」が挙げられるが、乾燥機についての情報を得る機会は、それぞれ単独でやってくるメーカーの営業のみという実情であったため、乾燥機導入を検討する府内事業者向けに人工乾燥機セミナーを開催した。木材業者とともに、京都府産木材利用促進をはかる行政の参加者も多くあり、また、実際に人工乾燥木材の展示と解説もあったため、盛況なセミナーとなった。
 
木材乾燥機導入セミナー
日時:平成28年7月1日(金)
場所:京都府林業会館
セミナー当日の様子
 
(4)原木の強度による選別と販売の実証
 原木市場において、曲げ強度(ヤング係数)によって分別された原木を販売するシステムを確立し、付加価値を持たせた原木販売による、山元への利益還元および製材業者の無駄な原木購入コスト削減を目指して、簡易型原木強度測定器(株式会社ATA製:HG-2020)を用いて、市場に集荷される原木の強度選別を行い、その実態と需要を調査した。調査結果により、選別販売に対する製材所のニーズがあることや市場における等級区分材の確保も十分可能であること、製材所の目利きに強度を判断するという点では不足があること、選別販売により製材所がこれまで余分に購入していた原木量を減らすことができることが明らかとなった。
市場において強度選別販売を継続的に実施するためには、選別費用をなるべく抑えなければならず、今後、等級区分の際の測定項目の省略・簡素化を検討すること、また、今回調査した原木が、製材品に加工された時点での等級の変化を確認し、選別精度の向上を図っていくこと等のシステムの構築も必要であるため、京都府森林技術センターと連携して引き続き調査していく。
 
調査の様子
 
(5)地域材プロモーション動画製作と普及啓発グッズの配付
一般府民に向け、「いろいろいいこと、木をつかうこと」というタイトルのプロモーション動画を製作した。「木をつかうことはいいことだらけ」いう、基本的でありながら、一般の人たちにはまだまだ浸透していない内容を盛り込んでいる。この動画は、府内の木材組合等にクラウドやCD-R等で配付するとともに「京都府内産材利用拡大協議会」の構成団体にも配布した。また、今後はyoutubeなどで一般公開し、広く使用してもらうことを目指す。また、わかりやすい「メッセージ入り紙袋」「メッセージ入りボールペン」を作成し、セミナーやイベント時等に配布した。とくに紙袋は持ち歩くことでの広告効果も期待でき、デザイン性も高いため好評である。
 
動画のシーン
普及啓発グッズ ボールペン
普及啓発グッズ 紙袋(表裏デザインが異なる)
 

事業実施により得られた効果

まず(1)により、設計者や発注者に対し木造建築を導入するための手引きとなる情報を提供できたことは、木造建築計画の「出発点」であり「意思決定」を担う層に対してアプローチできたということであり、今後の地域材利用の木造建築推進につなげる効果が大きく期待できる。(2)(3)(4)は、それぞれが木材業者強化のための新たな検証と情報提供であったといえる。中小零細企業が多くを占める木材業界において、業者単体ではなしえない、実施団体および協力者が連携したからこそ実施できた「調査研究」「とりまとめ」「広報、普及」であった。(5)は動画、グッズともに「わかりやすさ、伝わりやすさ」を重視し、広告効果、啓発の効果の高いものになった。
 

今後の課題と次年度以降の計画

木造構造設計講座に関しては今回「キホン」講座としたため、実務に活かせる詳細講座の開催を予定。また、作成したマニュアル「京都府の木で木造建築物を建てるためのイロハ」の説明会を府内5カ所で開催し、より高い効果を目指す。経営改善講座については、参加者から好評であったため、より多くの木材業者が出席するように他の会議等との併催を考えている。「乾燥機導入セミナー」「原木強度による選別と販売の実証」は製材業者の強化に関する内容であったが、次年度以降は品質管理や大量発注への対応体制整備についてなど、別の側面から木材業界強化を図っていく。啓発グッズ等による一般向け広報活動も引き続き実施する。