(有)マルヒ製材

平成27年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業

有限会社マルヒ製材

実施概要

1.実施団体の説明
復興庁の「結の場」での出会いを通じて、非住宅分野における地域材の活用方法について情報交換を重ねていたメンバーで、今回の林野庁「地域材利用の木材関係者等への支援対策事業」の助成制度に岩手プロジェクトとして応募するべく協力した。
【岩手地域材活用グループ】
有限会社 マルヒ製材(事務局) :製品企画・設計、材料試験、原木確保、製材乾燥
株式会社イトーキ Econifa開発チーム :製品企画・設計、製品デザイン、試作品製作、経理
株式会社 シオン :製品企画・設計、製材乾燥、試作品製作、広報
 
2.事業計画
【テーマ】東京五輪・パラリンピックに向けて整備が進む交通施設向けロビー家具の開発
 
1)事業の目的
①近年、観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014が閣僚会議で決定され、東京五輪・パラリンピックを見据えた観光振興、インバウンドの飛躍的拡大に向けた取り組み、世界に通用する魅力ある観光地域づくりなどの施策が打ち出される中、旅行者が必ず訪れ比較的長い時間を過ごす空港や駅、港などの交通施設向けに、地域材であるアカマツを利用した大型ベンチをはじめとしたロビー家具を開発し、地域材の利用拡大を図る。
②2020年に2000万人を目標とする訪日外国人旅行者に対して、日本の木の素材感や加工技術の高さをアピールし地域材を海外にも訴求する。
③バリヤフリーを考慮したオプションと機能を持たせることで、交通施設以外の様々な空間に活用できる製品にすることで地域材の更なる活用領域の拡大を図る。
④開発製品の普及イベントを通じ、広く一般の方々へも地域材の「ぬくもり・癒し」の訴求を図る。
⑤蒸煮法と薬剤を使用することでヤニを「抑える」実証実験をアカマツで行い、納入後にヤニでクレームになりづらい、家具材料としてのアカマツの可能性を拡げる。
 
2)事業の内容
アカマツ特有の艶や大きくて柔らかな木目、温もりや香りを感じる事ができ、尚且つ洗練されたデザインのロビー家具を開発する。 空港施設や駅の待合での使用以外に大型商業施設や医療施設等での使用を想定し、木の持つ癒し効果を保ちながら、乳幼児やペットが触れても安全な石油系乾燥剤を全く含有しない、人と環境に配慮した純国産の天然油性自然塗料を使用する。
又、旅行者の機内持ち込みキャリーバッグや電源供給も可能なデバイスを組み込み、大規模災害時のみならず、施設宿泊の際にもベッドとして使用できる機能を持たせる。
 
3)事業結果
①展示イベント
 
【イトーキプレゼンテーション2017】
2017年11月8日~11日の4日間、イトーキイノベーションセンター「SYNQA」で開催。
「アシタのオフィス」「アサッテのオフィス」をコンセプトに1~2年先の働き方、2020年の働き方をプレゼンテーションする展示会にて、今回の試作品を展示。国の機関や全国の地方自治体、大手民間企業、設計事務所、建設会社、デベロッパーを中心に集客を行ない、延べ3,807社、7,711人の来場者をカウントした。
 
②報道
・日刊木材新聞8月19日8面にて紹介
・岩手日報12月9日4面にて紹介
・今村復興大臣定例記者会見にて被災地復興プロジェクトとしてプレス発表
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-1/h27_yuinoba_matching_all.pdf
 
③試作品
【パーソナルワークブース】
空港や駅などのロビー空間で、メールチェックや資料作成などを行なう際の周囲の視線に配慮した1人用のワークブース。PC作業などを立ち作業で行なうように設計しており、機内持ち込み可能なサイズのキャリーバックなどの収納空間を設けている。パネルの内側にはコンセントやUSBに対応可能な電源ユニットを設けている。
【大型ロビーベンチ】
多人数が一度に座れる大型のベンチ。様々なバリエーションのシート組み合わせが可能で、目的に応じて背もたれ付やシートなしのセッティングが可能としたので、緊急時や長時間の待機が必要なシーンではベッドとしての利用も可能となる。
【スツール】
アカマツの丸太を半割にしたスツール。アカマツ特有の艶や手ざわりが独特な触感で、背もたれ付と背もたれ無を用意、背もたれ付についてはワークブースやベンチとセットでの配置を考慮し、統一したデザインとした。
 
④技術開発
「アカマツのヤニ滲出抑制技術の開発」を岩手県林業技術センターと共同研究し、実用的なヤニ滲出抑制として、80・90・100℃の初期蒸煮と60~75℃の中湿乾燥を併用したアカマツ板材について、ヤニ滲出促進試験を行ない、蒸煮温度とヤニ滲出防止効果の関係について検討した。結果として、厚さ35mmのアカマツ板材において、乾燥時の初期蒸煮はヤニ滲出抑制に有効で、その温度は80℃以上であり、蒸煮温度が高ければ高いほどヤニ滲出抑制に有効であることが確認された。
*別紙「アカマツのヤニ滲出抑制技術の開発に係る報告について」を参照
 
⑤その他製作物(カタログ2種類)

【開発商品の単品カタログ作成】

【地域創生カタログby_Woods作成】
 
日々の営業活動や展示会において、全国のイトーキ及び代理店営業が持参して、啓蒙活動が可能なツールとして、今回開発したロビー家具の単品カタログと、Econifaの全国での取組みを紹介する地域創生カタログ「by_Woods」岩手版を製作した。
 

事業実施により得られた効果

1)アカマツのヤニを抑える加工技術の開発。
2)交通施設向けロビー家具シリーズの開発と製品化。
3)冊子制作とイベントでの展示による訴求。
 

今後の課題と次年度以降の計画

今後更なるインバウンドの増加に伴い、空港を始めとした交通施設の整備が進められていく。滞在時間が長い空港施設のロビー家具は、印象的で魅力的なデザインと機能面などに魅力を持たせることで、旅行者が発信するSNS等での情報発信にも期待が持て、海外に国産材の魅力を訴求できるチャンスとなる。空港や駅、バスターミナルなどの公共交通機関や、テナントビルのロビー、病院の待合など、導入可能なシーンは広く想定できる。今後はそのような施設担当者の目に触れる機会を増やす為、岩手県庁での設置やイベントでの展示を積極的に行ない、利用者からの声を反映させたバリエーションの展開や、ICTツールとの融合を目指し改良を重ねていく。