(株)グリーンマム

平成28年度 工務店等と林業・木材加工業の連携による住宅づくり等への支援事業

株式会社グリーンマム

実施概要

 現在、日本では住宅・非住宅に関わらず国産木材のり活用に関する関心が高まりを見せています。しかし、現在流通している内装建材の多くはスギ・ヒノキなど針葉樹の商品であり、強度や意匠などの異なる国産広葉樹を用いた商品が不足しています。国産広葉樹材の商品開発の課題としては、国産広葉樹丸太のほとんどがチップに加工されていることと、国産広葉樹は直径が小さいものや、通直な部分の長さが短いものが多く、既存建材の寸法に対応し辛いことが挙げられます。こうした背景を受け、本事業では国産広葉樹専門のチップ工場がある、岩手県下閉伊郡岩泉町を対象地として、国産広葉樹材の商品を開発し、提供していくための試作、検証を行う計画としました。
 実施した事業の内容は以下のとおりです。
 
1-1.岩泉町での国産広葉樹の現状把握
 チップ工場の平成27年度の原木入荷量は年間約52,770立米であり、現在その内のおよそ99%がチップになっています。
写真1-1.2mに玉切りされ横積みで運ばれる広葉樹  写真1-2.広葉樹のチップの山
 
1-2.チップ加工前の原木の建材としての新たな選別方法の策定
 チップ工場では既存の選別基準が設けられていましたが、非住宅市場での国産材利用も視野にいれると、節やカスレ、度合いによっては割れも含めて建材利用が可能であるため、新規に下表のように選別基準を設定しました。
 
表1-1.チップ工場での用材用原木の選別基準

 
写真1-3.虫喰い材を収納の面材に使った事例   写真1-4.岩泉町の製材業者 クリB材
 
1-3.選別された広葉樹の形状に対応した商品企画検討会の実施、試作
試作した製品の意匠品質は下記のとおり設定しました。
①節
 生節は◯ 抜け節は× 
 貫通している欠けについては×
 貫通していない欠けはパテ補修により◯ 
 ただし限度サンプルより多いパテ補修が必要な場合は× 
 また、端部の節は加工時の実の欠けに注意 
②色差
 色差については除外するものなし (クリ材は黄色い変色が多い)
写真1-5.パテ補修OK サンプル 写真1-6.抜け節アウト サンプル
 
写真1-7.パテ補修限度OK サンプル 写真1-8.クリの黄変はいずれもOK
 
 試作した製品は、303ミリ角のパーケットフローリングと乱尺のフローリングです。2mに玉切りされて出材されることと、曲がりや大きな節、腐れに対応して歩留まり良く建材を製作するために長さ方向を最短303ミリで建材を作りました。国産広葉樹は輸入材と比較して径が小さいものが多いため、製品寸法を考える時、巾方向にも注意を払う必要があります。今回は、従来のフローリングの巾より狭いものを含む3種類程度の巾を1梱包に入れる乱巾フローリングの試作を考えましたが、台風の影響で納材できず試作できませんでした。
写真1-9.パーケットフローリング   
左1列はクリア塗装品
 
1-4.住宅・非住宅市場への普及提案、試施工案件の獲得
 今回の事業対象地は台風10号の被害を受けてしまい、秋に出材される原木による選別による採算性やコストの実データを収集することができませんでした。そのため急遽試作した製品を試施工し、施工性評価やユーザーからの意匠評価を行う内容に変更させていただきました。試施工物件は、岩泉のコミュニティースペースとなる予定の場所、世田谷区のマンション、東京と大阪のレストランの4物件を獲得しました。レストランの2案件は事業期間に間に合わず、4月オープンに向けた工事スケジュールになっています。
 
1-5.試施工実施、施工性等の確認
 岩泉町の施工現場は、施工場所がほぼ四角形でフロアの複雑なカットが必要ない現場であり接着剤を端部しか用いない簡易施工を行ったため、25平米の面積を男性3人(素人)で2.5時間という比較的短時間で施工が完了しました。
写真1-10.端部などは手ノコでカット 写真1-11.岩泉町施工現場 施工後

 世田谷区の現場の施工時間は施工面積約50平米に対し、プロの大工2名で約6時間、塗装まで含めると9時間程度となりました。今回は、切り欠く部分も多く素人では1日では施工が終わらないと考えられます。しかし接着剤を使わない、既存床の上から置くだけの簡易施工にしたため、時間の短縮が可能になりました。

写真1-12.世田谷区マンション施工後 塗装は蜜蝋ワックス
 

事業実施により得られた効果

 2-1.国産広葉樹のカスケード利用促進、チップ加工前の原木の新たな用途開発。
 2-2.国産木材を用いた建材の選択肢増加。内装材としての利用など、国産木材の意匠イ
   メージの向上。
 2-3.節や変色などの木の個性を活かした商品開発(特に非住宅向け)。
 2-4.国産広葉樹材を用いた商品を製作する際の課題の抽出。
 

今後の課題と次年度以降の計画

 3-1.フローリング用接着剤を使った標準施工での施工評価の実施と寸法挙動対策。
 3-2.JASフローリング規格に沿った試験の実施による品質担保(意匠を除く)。
 3-3.床暖房対応やマンション用フローリングとして提案するための商品改良。
 3-4.内装に国産木材を採用した洗練された事例を増やすためのインテリアコディネータ
   ー等への勉強会の実施。
 3-7.素材生産、加工業者などへの節や変色材を用いた事例の開示と選別協力体制の構築。
 3-6.地域性を付加価値として訴求するためのトレーサビリティシステムの構築。