NPO法人木づかい子育てネットワーク

平成30年度 A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業

NPO法人木づかい子育てネットワーク

事業計画


事業計画(pdfで表示されます)

 

実施概要

実施団体の説明
 酒井産業株式会社(事業の総括、製品の開発、企画等を担当)
 NPO法人木づかい子育てネットワーク(事務、進行管理、マーケット調査等を担当)

 
事業の目的
現状の認識
 少子化社会を迎えて、教育機関、とりわけ幼児教育・保育の機関、団体は、特色のある保育、教育の確立に真剣に取り組んでいます。こうした中、木育は、体験不足が指摘される最近の子どもたちの育成に、多くの価値を提供するものの一つとして、大きな関心を集めています。それは教育実践のようなソフトウエア事業にとどまらず、玩具や遊具、室内の家具、設備、建築物に至るハード面に対するニーズでもあります。
 特に最近では、企業などが事業所内に保育施設を構え、そこに木育の要素を取り込む例や、公的な子育て支援施設が木材利用を積極的に取り入れる例が増加するなど、新たな木材需要、木材消費市場が形成されつつあります。しかもそこで要求される木材製品は、高い品質、価値を持つ素材の使用が望まれており、これからのA材利用の対象として十分に期待できます。
 しかしながら、幼児教育、保育施設、子育て支援施設への備品設備供給は、「教材販売」企業がそれを担い、強固な販売網によって寡占市場にありました。国産材、あるいは国産材製品の参入には大きな障壁があり、新たに参入を試みようとしても、多種多様なニーズを持つ教育機関、団体に対応できるノウハウも少ない状況でした。また、仮に発注を受ける機会を得たとしても、多くの場合は、「特注」製品として対応することが多く、価格競争力の点で問題があると指摘されることもあり、広く普及していくことが難しいのが現状です。
事業のねらい
以上のような現状認識のもと、今回の事業においては、提案者がこれまでに積み重ねてきた実績と経験、独自の流通ルートを生かし、教育機関、団体の多様なニーズに応えられるモデルとなる木製の教育・保育用家具、遊具、教材等の開発と、新たな販路としての教育機関、団体に対してPRするための訴求方法を確立することをねらいとしました。
とくに、これまでの教育用家具、遊具等の素材は、ブナやナラなどの広葉樹材が中心でしたが、近年では、スギやヒノキなどの針葉樹材の製品ニーズが高まっています。そこで、まず質の高い針葉樹材を中心とする新たなA材ニーズを掘り起こし、付加価値の高い製品開発を進めていきました。さらに、幼稚園や保育園等の教育団体や生活協同組合などの消費者団体やその会員を対象とした展示会の工夫、開催により、A材丸太を原材料とする製品の普及啓発に取り組みましたので、報告させていただきます。
 
事業内容
事業1 教育、保育等の木材製品ニーズの検討
 今回の事業では、幼稚園、保育園、子育て支援施設等への家具、遊具を含む教育・保育環境に向けた木材製品について、デザイナーや学識経験者等との連携のもと、製品の教育的価値、訴求力の点から製品の開発、見直しを進めました。特に狭小保育園・幼稚園へのヒアリングを行い、ニーズ調査、問題点の洗い出しなどを行いました。

(1)教育、保育等の調査
 教育・保育環境において使用されている玩具、遊具などの木材製品の種類、保育空間の活用状況ならびに木材製品に対するニーズを明らかにするために、以下のように調査を行いました。これらの調査から、製品開発の方向性、条件を検討し設計に活かしました。

〇訪問幼稚園・保育園
  • 埼玉大学教育学部附属幼稚園
  • しんえい子ども園もくもく(社会福祉法人 新栄会)
  • 三原どろんこ保育園(社会福祉法人どろんこ会)

〇ヒアリングの結果
①木材製品にどのような効果を期待するか?
  • 木材の持っているあたたかみが子ども、大人に伝わり、情緒の安定によいと思う。手にした時の触感がよく、あそんでいく中で手になじむ。
  • 木のぬくもりがあたたたかい雰囲気になる。自然な木の色が、目にもやさしくていい。
  • 化学物質によるハウスシックの心配もなくなりますし、木材=自然に触れることで精神面に落ち着きが出てくると思います。
  • 木の香りはリラックスしたりリフレッシュ効果があると思います。防災の事を考えると実現は難しいかもしれませんが「木の床で裸足」が理想です。
  • 木材を利用した玩具等は、手ざわりやあたたかさが子どもの育ちにとても良い、しかし、使用しているうちに角がささくれて、手にとげが刺さった等の指摘も受けたこともあり、良いとは思うが、、、
②木材製品を導入したいと思うか?
  • 木材製品に限らず、自然素材の玩具、遊具を取り入れていきたい。
  • 生活必需品、身の回りの物品に化学製品が多用されており、様々な素材を適度に混合させて様な経験を積んでいく点では、木材のみでなく、自然、天然素材に触れる事の保障は必要と思う。
  • 園の安全指針に沿って玩具や遊具を導入したい。片付けられること、多様な遊びが展開できるものが必要。予算がないので自作したりしている。
〇問題点、設計の方針
 ヒアリングの結果から、小規模幼稚園、保育園に限らず、室内空間に新たな遊具を導入する面積は限られていること、片付け、遊びの多様さなど、保育的価値を実現する遊具、玩具が期待されていること、自然素材の良さを生かした安全な製品であることが求められている。本事業においては、こうしたニーズに応じた製品の開発を進めることにした。
狭隘さを解決するために、壁や空間の有効活用がみられる。
 
事業2 A材丸太を原料とする高付加価値製品の標準モデル作成
 上記の検討の元、日本全国の木材生産地で生産が可能なように標準モデル化を図り、広く普及可能な体制づくりを目指して試作を検討した。狭小保育園・幼稚園で有効な、スペースを取らずに収納でき、見立て遊びなどが容易にできる木育ツール「ハコブロック」の開発・試作を行いました。
〇デザイン、設計者
 宮原克人
 1996年 東京藝術大学大学院 美術研究科修士課程工芸専攻(漆芸) 修了
 2005年より筑波大学講師を経て、現在国立大学法人筑波大学芸術系准教授
〇ツールコンセプト
 軽くて運びやすい国産針葉樹で作られたハコブロックは、園児・保育士のアクティビティ、クリエイティビティを誘発します。狭小の保育施設においても多様な遊びが展開されるでしょう。ブロックを積み立体造形をつくる。ブロックと板で空間をつくる。そして、運ぶための道具になったり、テーブルや椅子などの家具にもなります。さまざまなシーンをつくりだすハコブロックは、日常の動作と遊びを繋げます。
事業3 展示会等への出展
・2月1日~2日「木と住まいの大博覧会」(ナイス(株)主催)
東京ビッグサイト西ホール内木育コーナーにてヒノキバージョンの試作を展示、来場の子どもたちに実際に体験してもらい、遊びの展開を観察しました。

 
 展開例


・2月8日 千葉県内保育施設にて展示
 本製品の普及と木材利用の必要性の訴求活動の一つとして、生活クラブちばの保育施設にて、ヒノキバージョンの試作を展示、子供たちに試用してもらいました。生活クラブの保育所は最近注目される事業所内保育所であり、今後木材製品の導入が期待される新たな市場です。
 今回の事業では、保育士に対し、製品の使用感、安全性、遊びの多様性などの評価についてヒアリング調査も併せて実施しました。遊び方については概ね好意的な評価をいただきましたが、安全性やメンテナンスに対する懸念の声が多くきかれ、今後の改善につなげていきたいと思います。

ヒアリング調査結果(千葉県内幼稚園)
実施日 31年2月8日
実施場所 ・生活クラブ風の村保育園八街
・生活クラブ風の村はぐくみの杜君津
・生活クラブ風の村保育園佐倉東
・生活クラブ虹の街 小規模保育おおたかの森
保育士の方からのご意見 ・自由な発想で遊べるのでおもしろい。
・4~5歳ぐらいが適正に感じる。
・大工さん遊びによい。
・重い。足に落とした時に危険。
・汚れが気になる。
・面取りが足りない。
・収納が問題になる。キャスター付のワゴンなどにまとめて収納できると良い。キャスター付ワゴンまたは収納ボックスも遊具として遊べるようにすればよい。
・ある程度重さがあった良い。大切に扱う能力を育てるのに良い。
・大人でも使える。テーブル、ディスプレイ棚等に活用できる。
・無塗装が望ましいが、消毒が必要なため、メンテナンスが気になる。
・ままごと道具として使用したい。
・3~5歳向けであると感じる。
・自分なりの遊具を作る遊びが目立つ。シーソー、車、バイクなど。
・絵本、ぬいぐるみ、ままごとセットなども持ってきて組み合わせて遊ぶことが多い。
・囲うなどして自分の空間作ることが好き。

・2月21日 パルシステム埼玉のコミュニティスペース「ぱる☆てらす」(さいたま市浦和)2階フリースペースにおいて、スギバージョンの試作を展示、来場の子どもたちに実際に体験してもらい、保護者へのアンケートを実施しました。結果は以下の通りです。

1)ハコブロックの持つ製品イメージ
 50項目のイメージ語からハコブロックの製品イメージの抽出を行いました。その結果、ハコブロック自然な、楽しい、あたたかい、安全な、安心な、体験的な、創造的な、環境によい、複数で遊べるなどが上位となり、企画・設計意図が十分に伝わっていることがわかります。

 
2)ハコブロックイメージと理想イメージの差
ハコブロックの製品イメージと理想の遊具についてのイメージを比較した結果、強い相関が見られ、使用者ニーズに対応していることがうかがえます。
また、ハコブロックが理想の遊具イメージよりも強く印象づけるイメージ語は、あたたかい、体験的な、シンプルな、柔らかいなどでした。一方理想のイメージを下回る語には、安全な、健康的な、没頭できるなどがあり、今後の改善の指針としてさらに改善していく必要があると思われます。
・WEBサイトhttps://www.pride-wood.net/に、今回の事業で作成した製品について掲載、情報を発信しています。
 

事業実施により得られた効果

 今回の事業においては、教育機関、団体の多様なニーズに応えられるモデルとなる木製の教育・保育用家具、遊具、教材等の開発を行いました。広葉樹材が多い玩具、遊具ですが、スギ、ヒノキの軽さを生かした製品は、保護者、保育者、事業者のニーズを満たすものであり、新たなA材ニーズの可能性を見出したと考えます。
 また、幼稚園や保育園等の教育団体や生活協同組合などの消費者団体やその会員を対象とした展示会の工夫、開催により、A材丸太を原材料とする製品の新たな市場開発の可能性が見出せたと考えています。

今後の課題と次年度以降の計画

今回の展示で得られた消費者の意見やヒアリングの結果を反映し、価格の決定、製品シリーズの展開を検討し、流通ルート及び各園での導入法を確実なものにする必要があります。また、次年度以降については、次の3点についてさらに検討を続けていく予定です。
  • 引き続きの検討委員会開催(中間報告、専門家からの指導)
    今回の製品についての改善と、さらなるニーズへの対応に向けて、専門家からの指導、助言を仰ぎながら、検討委員会を継続していきます。
  • 製品の改良
    アンケート調査、ヒアリングの結果は、製品の保育利用における有用性を示す一方で、材料のメンテナンス、安全性への不安への対応など、いくつかの課題を示しています。現場の声を取り入れながら、よりよい製品の開発、改良を進めていきます。
  • 成果発表会開催等
    本製品の試用を各地で進め、その効果を検証するとともに、その結果について随時発表していきたいと思います。また本製品につづく製品の開発を引き続き進め、各種展示会等で公表するとともに、各地の地域材を利用した製品開発、普及につなげていきたいと思います。