一般社団法人木と住まい研究協会

令和2年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

一般社団法人木と住まい研究協会

実施概要

事業計画

実施概要

一般社団法人木と住まい研究協会とは
(一社)木と住まい研究協会は、木造建築および木材関連諸団体等と連携して、住宅等の建築物への積極的な木材活用の推進を図り、循環型社会の形成、将来にわたる住生活産業、住生活の向上・発展に寄与するような役割を果たすために、2012年5月に設立された。会員は、木材や木造建築物に関わる社団法人や企業で構成され、業界の利益団体ではなく、地域の木造住宅や木材の振興のために、互いに連携して業界横断的に支援していく組織である。
 
事業の目的
当事業において ①A材を活用した国産JAS製材供給システムの開発と、その普及のための、②Web展示会での普及啓発を通じて、利用拡大に伸び悩む大径木のA材丸太を原料とした国内JAS製材の利用拡大を図り、国内林業の活性化、地域経済の活性化を目的とする。
多くの建材はJIS規格やJAS規格という共通基準での品質表示が当たり前で、かつ設計者もそれを求めている。一方で、構造材に関しては、国産JAS製材の認知度はまだまだ低く、ハウスメーカーやゼネコンの多くは、品質が明らかな集成材や輸入材を標準的に採用している。また、国内の機械等級区分JAS製材を製材できる工場は限られており、価格面・供給面での課題もある。さらに、国産のスギ材のせん断力の基準強度やヤング係数が低いため外材のベイマツやRW集成材よりも梁成を上げる必要があり、材積が上昇しコストアップにもつながるといわれている。
今回、実際の物件で外材からスギの製材(JAS機械等級区分製材)に代替えした場合に、どのくらいの材積がアップするかの梁成チェックを実施し、スギ製材を横架材に使用することを提案して実際に建設してもらう。この対応により住宅向け・非住宅向けの構造材の供給システムの構築を目指す。
上記の躯体の上棟現場を撮影し、その普及啓発の場として、Web展示会「木フェス」を活用する。従来までは当社団とナイス㈱の共催で「木と住まいの大博覧会」を開催してきた。「木と住まいの大博覧会」とは、「木のある暮らし」、「中・大規模建築物の木造化」の提案、さらには自治体や関連団体が出展、大学の研究発表の場にも活用してきた公共的な展示会で、毎年全国5か所で開催され、これまで15万人以上が来場していた。しかし、昨今の新型コロナウィルスの影響により、従来のような大規模な展示会の開催が難しくなっている。そのような中、with コロナ時代での新しい情報発信の形態として、Web上での展示会「モクフェス」の活用を試みた。「木フェス」は、時間や場所などの物理的制約にとらわれないことから、幅広く普及が期待できる。木材に関する情報を提供するWeb上の情報プラットフォームとする事を目指す。閲覧対象者はゼネコン、ビルダー、設計者、及び一般ユーザーとし、対象者への積極的な周知を図り、特に国産JAS構造材の意義について訴求し、利用拡大につなげる。
 
事業内容・結果
 A材を活用した国産JAS構造材供給システムの開発
 
1)適材適所で利用できる国産JAS製材の選定

本事業では、JAS機械等級区分を有する製材所を選定し、プロトタイプとしての供給システムの構築を行う。今回選定したのは栃木県の二宮木材㈱で、栃木県北部は八溝スギの産地であり、気候にも恵まれ、なおかつ手入れの行き届いた森林が広がっていることから、良質な材の産地となっている。本事業ではこれをモデルケースとして、供給システムの構築を行った。
今回の仕様は、躯体の柱・梁を全て、栃木県産スギのJAS機械等級区分製材とし、標準在庫を長さ4,000×梁成240迄×105㎜とした。(表参照)
なお、今回の当初計画では徳島県のウッドファースト㈱も選定したが、工務店候補に辞退されて、結果として取り組みことが出来なかった。辞退理由は、梁桁の供給が地域内で完結せず、コストが上昇し、それを上回る価値を見出せなかったことによる。
2)外材から国産JAS製材への代替提案へのシミュレーション
ベイマツやRW集成材からスギ製材に代替すると、ヤング係数が低くなることによる梁成不足や、せん断力が低いために「端部仕口断面不足」によるNGが出ることがある。材積が上昇するとコストアップにもつながり、国産JAS製材の普及にとっては、障害となる。 しかしながら、実際に構造計算で梁成のチェックをすると、NGが出るケースは少ないことが経験上分かっている。
今回の実物件では、梁の掛け方等を事前に打合せ、外材(ベイマツ、RW集成材)からスギ材に代替した場合の梁成チェックをした結果、2本の梁が梁成不足となった。1本は端部のせん断力不足で梁成150㎜⇒180㎜にサイズアップ、1本はたわみ量による梁成不足で梁成180㎜⇒210㎜にサイズアップという結果であった。
その結果を、工務店を通して施主に提案し、栃木県産材のJAS構造用製材を使用した構造躯体が採用された。


3)上棟現場のビデオの撮影
実施日:2020年12月1日、開催場所:宇都宮市(H様邸) 
H様邸(延床面積120㎡、木造2階建て)の躯体の上棟現場の撮影を実施した。
当日は、施主のH様も来られ、栃木県産の八溝スギの構造躯体を見て、その美しさに感嘆されていた。インタビューも引き受けて頂き、ご夫婦で喜びを伝えて頂いた。
 
 
Web展示会での普及啓発
Web展示会名称:「木フェス2021」
URL:https://www.moku-fes.com/
開催期間:2021年1月18日(月)~2021年1月24日(日)※
※先行開催期間。2021年2月24日(水)~2021年3月13日全面開催予定
対応デバイス:PC、タブレット端末、スマートフォン
内容:JAS製材の普及を目的とした、以下のコンテンツを作成・掲載
 
■JAS製材とは何か

JAS製材の基礎知識を、エンドユーザー目線で内容を編集し掲載した。
【掲載項目】
・構造材に求められる3つの性能
・品質が明確な木材を選びましょう
(JAS材は品質が明確である)
・安心安全なJASマーク
・(JAS材は)どんな検査をしているの
 
■特別インタビュー
神奈川県産JAS製材品を使った幼児施設の実例を、設計した設計事務所へのインタビュー形式で掲載。実際に工夫したところや苦労したところなどを紹介し、これからJAS製材を使った建築物を設計する際に参考にしていただけるような内容とした。
■住宅への導入事例
本事業①にて、導入が可能となった、栃木県産スギJAS製材を使った実際の住宅の紹介を行った。上棟の様子、お施主様インタビュー、工務店様インタビュー、栃木県産JAS製材所の紹介の4種類の動画を作成し、掲載した。実際の住まい手と作り手の話を紹介する事で、お施主様の立場、工務店の立場それぞれの目線での訴求を図った。

■非住宅への導入事例
非住宅の設計において、JAS製材を導入している非住宅現場を2例紹介した。
 
■セミナー
講師:山田憲明構造設計事務所代表 山田憲明氏
タイトル:JAS構造材を木造建築に活かすために
概要:JAS構造用製材を使用するメリット、木造で大空間を実現するための設計上の手法を紹介する事で、木造非住宅設計の参考となる内容となっている。
 

事業実施により得られた効果

①工務店を通して施主に対して国産JAS構造材の意義と、栃木県産材のJAS構造用製材躯体のメリットを提案し採用された。具体的な物件に対して梁成チェックをして、国産JAS構造材を使用しても大きく材積や価格が変わらないことを提案することが、有効な手法であることを確認できた。
②新規登録者数 730名 (販売店、工務店、行政など)

 

今後の課題と次年度以降の計画

今後は、工務店が国産JAS構造材を標準仕様とするために、梁成チェックと製材メーカーと標準仕様と標準在庫の仕組みづくりを順次他の地域にも実施していく。
また、Web展示会については本事業内ではJASのみのコンテンツの提示としたが、2月24日からはJAS以外にも、木材商品、木造非住宅、受注支援など、木材を中心としながらも幅広い内容でコンテンツを充実させることで、より多くの集客を目指し、効果的な普及啓発を行う予定である。」