住宅 関東甲信越

平成27年度 木づかい協力業者による木材利用の促進事業

国産材製材協会

実施概要

CLTは建設業界を変革する可能性を秘めた魅力的な新材料であることは間違いないと思われるが、一方普及のためにはまだまだ課題もある。中大規模建築に木材を使用しようという機運は大きな盛り上がりを見せているが、方向性を見誤れば、新しい市場を外材に蹂躙されてしまう恐れもないとは言えない。
そこで、中大規模建築の新市場をCLTのみに託すのではなく、他の方式について検討するのも有意義ではないかと考え、研究会を立ち上げ、CLTに代わる新しい床製品の方向性として以下の3つの条件を満たす試作品を提案することとした。
①一般の製材所で大きな設備投資なしに製造可能であること
②製材の中でも比較的用途が少なく、相対的に生産量の多い材料を使用できること
③接着剤に頼らない方式も検討対象とすること
今年度は取組み初年度として、特に②に着目し、120mm×45mmの間柱材を縦に配置し接着接合する方式を検討した。
 

得られた効果

柱梁をS造とし、床構造体に木質材料を用いた建物について検討した結果は以下の通り。なお、対象とした床製品は、兵庫県産スギ製材(間柱材120mm×45mm)を縦に並べて圧着した床パネル(厚さ120mm×幅720mm)。

① 床としての構造性能(変形性能、合成梁効果等主として面外性能)については、過大な変形が生じることの無いよう、適切な断面性能を確保し、また適切に小梁等を配置すれば大きな問題はないことを確認した。また、頭無しスタッドとエポキシ樹脂を用いた接合方法及びフィンガージョイントについても特段の問題はないことを確認した。

② 床の歩行振動の問題については、木材が軽量であるゆえに、固有振動数については有利だが、応答加速度については不利となることから、左右に隣接する床を相互に接合することや、耐火被覆材等を貼り付けすること等により、重量が増し、応答加速度を小さくできると考えられる。即ち、隣り合う床相互の接合方法の開発が今後の課題である。

③ 鉄骨梁と木床、木床相互の接合強度(主として面内性能)については、鉄骨梁との縁距離、端距離のいずれの方向についても、CLTに比べて小さな値となった。よって、剛床確保等の目的にこの接合方法を用いるのは難しいことから、剛床確保のためには、小梁の配置方法の改善等の検討が不可欠である。また、隣り合う木床相互の接合方法については、スプライン処理を検討したが、この方法では剛床を確保するに十分な剛性が得られなかったので、更なる検討が不可欠である。

④ 木床製造上の問題点として、今年度目指した木床の基本性能の把握による製品としての必要条件を整理することであったが、今年度の実験及び検討のみでは十分な成果を得ることが難しいため、次年度以降に向けて以下の新たな事項の検討に取り組む必要がある。

・長期荷重の載荷能力
・合成梁効果
・剛床の確保
・床歩行振動の抑制
・耐火性能
・今年度検討した間柱材(120mm×45mm)と他の方式との比較検討
  120mm角製材、105mm×210mm製材との比較


 

今後の課題と次年度以降の計画

  次年度以降の課題としては、上記の2に加えて、
 ・鉄骨との接合方法、歩行振動等の評価
 ・隣り合う床相互の接合方法、床パネル縦方向の接合方法、小梁の配置方法等
 ・接着剤の効果と製作手間への影響度
 ・接着剤を用いず上下に合板を貼り付けした場合の効果と製作手間への影響度
 ・木床と鉄骨梁の連成振動
 ・鉄骨上部の床厚を小さくする工夫
 等が必要になると考えられる。