特定非営利活動法人木の建築フォラム

平成28年度 工務店等と林業・木材加工業の連携による住宅づくり等への支援事業

特定非営利活動法人木の建築フォラム

実施概要

 国土の環境保全と地域の産業に関わる森林の循環、そこから産出される地域材の有効利用、そして、木の家の暮らしと木を巡る文化については、専門分野に関わらず広く国民、特に生徒・学生などの若者にこそ教養として知っておいてほしいことがらであると考えています。このことに関して、これまで国内の学校や大学などの教育・研究機関での教育・啓蒙活動はほとんど進められていません。また、これまでの木造の担い手育成等は、主として建築科の学生を対象に実施されてきました。
 本事業では、建築専門家の卵のみならず、広く一般の学生を対象に、森林循環、地域材の有効利用、木の家の暮らしと木の文化について知ってもらうために、まず、ものづくりに関わる美術系大学の学生を対象としました。
 この試みが、今後、一般の方々、特に若い方々への、啓蒙・普及の活動を一般に広げてゆく端緒となることを期待しています
 
若手の木育・住育の普及の検討
 広く一般の学生を対象に、森林循環、地域材の有効利用、木の家の暮らしと文化について啓蒙・普及する試みの端緒として、若手の木育・住育について、建築関連学科の枠を取り払い、大学での一般科目として単位認定授業とする可能性を検討しました。また、若手の木育の可能性を検討し、ウッドプログラムの内容を検討しました。
 
「尾鷲の住宅づくりグループと大学教育機関との連携による
 ウッドプログラム」実施
 平成28年9月、「尾鷲の住宅づくりグループと大学教育機関との連携によるウッドプログラム」を三重県北牟婁郡紀北町にて実施しました。
東京芸術大学、三重大学、愛知県立大学、東京都市大学の4大学から11名の学生の参加がありました。
山林と木材についての座学、尾鷲ひのきを使った実習課題、また、速水林業の大田賀山林のフィールド実習など幅広く木について学ぶことのできるプログラムとしました。
 
報告書作成、配付
「尾鷲の住宅づくりグループと大学教育機関との連携によるウッドプログラム」の実施内容、講師、および、大学関係による木育に関しての提言、参加学生のアンケートをまとめ冊子を製作しました。今後に渡って広く木材関係者、教育機関等に配付します。

「尾鷲の住宅づくりグループと大学教育機関との携によるウッドプログラム」の様子
 
「尾鷲の住宅づくりグループと大学教育機関との連携によるウッドプログラム」は右の内容で平成28年9月6日から3日間の日程で実施されました。
 実習課題では、尾鷲ひのきを用いて、学生たちが実際に自分の手を動かして木の製作物をつくることで、木材と木造の理解を深めることを目的としています。
 このテーブルは、本来は木の建築の架構として用いられる「早川式カンザシ工法」で組んだフレームを脚とし、その上に天板をのせたもので、今回のウッドプログラムの実習課題として設計したものです。
「早川式カンザシ工法」は、大きな木造建築で天井の高い空間をつくり出すために、日本の伝統的な木造建築の技術を応用し、同時に、伝統的造形表現を継承することを意図した「現代四方差し」ともいうべき現代の木組みです。
 建築の部分モデルなどではなくテーブルとしたのは、誰にとっても割合身近な家具であり、後に実際に活用でき、また、短い実習時間の中でひとつのものを完成させる達成感を得られることを意図しました。

 



「地域材とものづくりを学ぶウッドプログラム」メンバーリスト
参加学生 東京芸術大学 湯浅綾佳、鶴田航、今中真緒、篠田怜寿
三重大学 松並里奈、円山栞多、前田海度
愛知県立芸術大学 伊藤沙耶佳、竹内さつき
東京都市大学 森麻美、植田千尋
講  師 NPO法人木材・合板博物館 岡野健、速水林業 速水亨、
工房南 南秀明、堀尾嘉正、森林組合おわせ 濱田長宏
協  力 東京都市大学 大橋好光、東京芸術大学 金田充弘・秋田亮平、
三重大学 関俊一、愛知県立芸術大学 森真弓
事業担当 森林再生システム 加賀谷廣代 、 NPO木の建築フォラム事務局 細田洋子、 
NPO木の建築フォラム 神田雅子
 

事業実施により得られた効果

 広く一般の学生を対象に、森林循環、地域材の有効利用、木の家の暮らしと文化について啓蒙・普及を行うための木育・住育について教育機関との実質的連携を検討しました。本事業では、大学教育に関連するものに助成金を使用することは相応しくないとのことで、平成28年度の実施は見送りましたが、大学の状況によっては、建築の専門科目だけでなく、一般科目として、木育関連の内容で単位認定授業にできる可能性があることがわかりました。
 また、ウッドプログラムの実施にあたり、大学関係者、学識経験者、林業家、木材生産者と連携することができ、木についての知識学習、木材製品製作実習、森林フィールド実習を含む、今後も応用可能なプログラムを作成し、実施することができました。
さらに、11名と少人数ながら、木育の対象者を建築分野と限定せずに実施できたこと、参加学生のフィードバックを得られたことは成果となります。
 上記をまとめた報告書は今後も広く頒布し、各所で行われる木育・住育の普及の参考
となると考えています。
 

今後の課題と次年度以降の計画

 木材と木の建築の持続的かつようにとって、森林循環、地域材の有効利用、木の家の暮らしと文化についての啓蒙・普及は、建築分野の枠を取り払い、さらに、より若い世代を対象にした息の長い活動を続けて行くことが重要です。今回の事業での試みは、小規模ではありましたが、今後も継続し、木育.住育の対象者をより広く、より若くし続け、ひいては、日本の森林、木材、木の家の文化が人々の教養としてあたりまえのこととなると良いと考えています。