一般社団法人木と住まい研究協会

平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業

一般社団法人 木と住まい研究協会

実施概要

事業の目的
 2020年東京オリンピック・パラリンピックでの新国立競技場をはじめとした競技施設、仮設建造物における木材利用促進が加速する「木材新時代」の環境下、国産材・地域材を中心にさらなる木材振興を図るために、大消費地である東京にて国産材・地域材利用拡大を推進する展示会「木と住まい大博覧会 2017東京」(以下、木住博)を開催した。
 木住博は一般ユーザー・プロユーザーの方へ向けた情報発信による木材需要の拡大、各展示会参加団体同士のネットワークの構築、木材、木構造における知見の情報発信などを目的としている。特に情報発信においては、木材の持つ特徴、木材の良さを、実際に触れて感じてもらい、昨今行われてきている研究により得られたエビデンスを背景とした確かな情報を発信することで、エンドユーザーや、これまで木材を利用してこなかった非住宅関係の設計関係者、施工関係者に対して木材利用を訴求することを目的とした。
 
木と住まいの大博覧会2017東京
【日時】2017年2月3日(金)~2017年2月5日(日) 
【来場者数】開催3日間で66,000名
【開催場所】東京ビッグサイト西1・2・3ホール、及びアトリウム
展示内容:大きく5つの展示にレイアウトを分けて展示を行った。

①住宅向けの木質化空間提案コーナー
 会場内にA:木質化空間提案コーナー、B:飫肥杉デッキ材提案コーナーの2つの実物躯体をたて住宅向けの特色のある国産流通材の展示を行った。
キッチン 和室での展示の様子
寝室 書斎

②木造非住宅提案コーナー
 東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町において、隈研吾氏の設計でナイスグループが代表を努める建設共同企業体が施工を行う復興商店街「さんさん商店街」の実物大躯体展示を行った。建物にはナイスグループオリジナルの金物接合による軸組工法「パワービルド工法」が用いられている。地域材と国産材をうまくコーディネートすることで品質を確保しながら全体のコストを抑える方法の紹介をおこなった。
 さらに、新素材として注目が高まるCLT(直交集成板)については、ナイス㈱が日本初の鉄筋コンクリート造とCLT造の平面混構造で建築を進めるナイスグループの仙台物流センター事務所棟の解説を、映像を交えて行った。

③産学官連携コーナー
○大学ブース
 各大学の研究室単位が参加し木の需要創造や価値向上に繋がるような研究成果のポスター発表を行った。今回の展示会では、「材料」「木質構造」「木材の効果」、及び「木材利用」と大きくテーマを分けて展示を行った。
大学ブース参加研究室

 また各大学の先生及び学生にも参加していただき、大学ブース内で来場者への研究内容の説明をしてもらい、将来の業界の担い手に幅広くこの展示を見てもらった。
大学ブース 来場者への説明(宇都宮大、中島教授)

○47都道府県ブース
 47都道府県がそれぞれブースを出し、それぞれの地域材の情報発信や各地域の特色に合わせた木製品の展示を行った。来場者は、ご自身が現在住まわれている地域、あるいは出身の地域を中心に見学されていく方が多く、木材への興味の高さや、あるいは自身の出身の木材を使いたいという声も多く聞かれ今後の参考になった。来場者にはiPadによるアンケートも実施したので、その結果を参考資料として添付した。出展者である行政からは、他の自治体が一堂に出展するような展示会はこれまでなかったとの意見を頂き、自治体間の情報交換としての役割も担えたという感触があった。
47都道府県ブース全体 47都道府県ブース

○シンポジウム・セミナー
シンポジウム概要
セミナー概要
 
④木のソムリエコーナー
 エンドユーザー向けに、無垢材の特徴や、可能性を実際に五感で体感してもらい知ってもらい訴求する、をコンセプトとして、体感型の展示を行った。
 無垢の庭」という名称で無垢の一枚板と数種類の樹種のチップ、木片を活用した庭を展示し、木材でも形状や種類によって装飾的に使うことができるという事を提案する本ブースの象徴的な展示を行い、目的とした楽しみながら、無垢材について知ってもらう展示が実施できた。
木のソムリエブース入り口 足湯体験・床の踏み比べ
からからつみきコーナー 木育コーナー全体

○調湿の箱
 木造の小屋を4つ設置し、内装を木質化、非木質化したもので調湿性能がどれほど変わるかを多湿状態、過乾燥状態を人工的に作り実験展示を行い、実際に小屋の中に入ってもらい、同じ湿度、温度でも木質化と非木質化の小屋での空気質の違いを体感してもらった。

○足湯体験及び、床材の種類の違いによる踏み比べ
 今回試験的に、足湯体験をしてもらい、その後足湯浴槽の周りに敷き詰めた5種類の床板の踏み比べをしてもらった。足湯にはクロモジの精油を入れ、香りも楽しんでもらった。床板の踏み比べをした際、どの床が好ましいのかを口頭でアンケートを取った。
好ましい床アンケート

○11種類の樹種のチップ
 11種類のチップを用意し、樹種の違いによる香りの違いを体感してもらい、さらに来場者には好きな香りを持ち帰ってもらうようにした。スギ枝葉、スギの幹、ヒノキ枝葉、ヒノキ幹、アカマツ、カラマツ、クロモジ、ヒメコマツ、ニオイコブシ、ミズメザクラ、クロモジの展示をし、2000名近くの方が匂いの持ち帰りをしていた。

⑤木育、木の小物販売コーナー
 子育て世代を対象として、子どもが木に直接触れ合うことで親子で木の良さを知ってもらうコーナーとした。宮崎県産スギのつみき(からからつみき)を中心とした木のおもちゃで遊べるスペースや、ヒノキと飫肥杉の椅子の製作体験を行った。これについては(公社)国土緑化推進機構と連携してブースを設置した。また小物販売では手軽に木の良さを感じてもらう製品の販売を実施した。
 

事業実施により得られた効果

・展示会を通じて、約6万人以上の方々に地域産材利用拡大の普及活動ができた。
・原木-製材-流通-施工-消費者を結び付け、顔の見える関係を構築することができた。
・プロユーザーに良質な地域材商品を見てもらうことで、住まい作りでの地域材の標準採用化を推進した。
・地元の工務店やビルダーが良質な地域材を採用することで、画一化された大手ハウスメーカーとの差別化を推進し、住まい手の選択肢を増やすことができた。
・CLTなどの木質材料の新たな素材や新しい技術の普及促進、提案ができた。
・木造非住宅の生産体制を具体的に提示することで、ゼネコンや設計事務所にとっての木造受注の窓口であることを示し、今後の木造非住宅の拡大につなげることができた。
・産学官連携体制を構築することで、森林循環まで含めた木材利用拡大につながることができた。
・シンポジウム、セミナーを通して木材利用の重要性、また木材利用における住宅、建設業界が担う銃声を示す事ができた。
・47都道府県すべての都道府県の出展をしてもらえたことで、来場者の興味を引いたことはもちろん、各行政への本展示会の認知度を高めることができた。
・木育を通じて、将来の木材利用に向けての布石を打つことができた。
・木づかい運動を紹介することで、国民の木材利用促進に対する意識を醸成した。
・林野庁をはじめとして、(一社)全国木材組合連合会、(一社)全国森林組合連合会、(一社)日本建築士連合会、(一社)日本木材学会、(公財)日本木材加工技術協会、(公財)日本木材保存協会等の後援を得ることができ、より公益的な展示会を開催することができた。
 

今後の課題と次年度以降の計画

 今回の木と住まいの大博覧会2017東京では、①住宅向けの流通材の展示、②中大規模木造建築の提案③産学官連携強化、④木のソムリエコーナー、⑤木育、の5本柱での展示を実施した。それぞれ独立した形で展示をし、それぞれ集客をすることはできたが、今後はそれらが互いに連携する形で、博覧会全体のストーリーをもって展示し来場者により深い理解を得た上で、地域材拡大につなげる形の展示会を開催していくことが課題となる。
 また、木材業界全体として、木材の良さをエビデンス、たとえば木の良さ委員会で編集された内容等をもって、確かな情報を今回開催したようなシンポジウムやセミナーを通して広めていくことが重要な役割であると考える。プロユーザーからエンドユーザーまで幅広い層が来場する本展示会で、そのような普及啓発活動を今後も持続することに大きな意義があると考える。
 さらに、今後は認証材制度の紹介や、来年度4月から施行されるクリーンウッド法といった、制度関係の紹介や活用方法を提案することで、より公益性をもった木材需要拡大の活動を進めていくことも予定している。