NPO法人木の家だいすきの会

令和3年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

NPO法人木の家だいすきの会

事業計画


事業計画(pdfで表示されます)
 

実施概要

団体概要
 特定非営利活動法人木の家だいすきの会が中心となり、“Tategu”with Kumiko & Washi Art 協議会を立ち上げ事業に取り組む。
 

“Tategu”with Kumiko & Washi Art 協議会の推進体制

 
事業の目的

1)背景

 本会は森林の持続的な循環利用を推進するため、埼玉県ときがわ町の林業・木材生産者と連携して武蔵野地域における木の家づくりを過去20年にわたって進めてきた。
 また、5年ほど前から、木材の付加価値を高めるため協同組合彩の森ときがわ(素材生産者と製材所が組合員の組合)と協同して、含水率やヤング率等の木材性能を確保しながら、木材本来の香り成分が漏出しない低温乾燥技術の開発に取り組み、数年前より実用化した。昨年度は木材の香り成分の研究では全国の先駆けとなる九州大学清水研究室に依頼して、成分分析も実施し、健康効果の高い香り成分が多く残されていることがわかった。
 一方、埼玉県ときがわ町は、職人のまちとして知られており、手漉き和紙や伝統的な組子の建具の技術が継承されている。昨年、木の家の建て主を招いて実施した親子参加の組子づくりや手漉き和紙づくり、そして、作成した作品を組み込んだ注文建具の制作は、建て主の満足度を大きく高める結果を得た。

2)目的

 健康効果を期待できるときがわ産の低温乾燥木材を使用し、地域に継承されてきた伝統的な組子と手漉き和紙の技術を活かし、かつ、SDGs指向の高いエシカル層に訴求できるデザイン性の高い高付加価値な建具を開発し、A材丸太の新たな需要の開拓を図ることを目的とする。



組子と手漉き和紙の玄関引き戸


●手漉き和紙の室内障子

●現代的な組子のデザイン


 

事業内容
1)企画開発ワーキングの開催

本会(コーディネーター、設計者、工務店)、協同組合彩の森と川(素材生産、製材、乾燥)、栗原木高所(組子の建具)、手漉き和紙たにの(和紙)及び㈱コトナ(協力デザイナー)でワーキングチームを構成し、月1回程度、企画開発ワーキングを開催した。

 令和3年8月25日 第1回企画開発ワーキングの開催
 令和3年9月3日 第2回企画開発ワーキングの開
 令和3年9月28日 第3回企画開発ワーキングの開催
 令和3年10月15日 第4回企画開発ワーキングの開催
 令和3年11月22日 第5回企画開発ワーキングの開催

2)高付加価値建具の企画とデザイン

SDGs指向の高いエシカル層を主たるターゲットとして設定し、そうした層への訴求力を高めることのできる開発コンセプトを検討した。また、デザイナーの参加を得て和風だけでなく洋風のライフスタイルにもなじむ組子と和紙の新しいデザイン性の高い建具の開発を行った。

玄関引き戸 手漉き和紙のカラーコーディネーション

3)建具の試作

 健康効果が期待される低温乾燥材を使用し、企画開発ワーキングで検討したコンセプトとデザインに基づき、協同組合彩の森とき川が製造する低温乾燥木材及び手漉きわしたにのが製造する伝統的和紙づくりの技術による手漉き和紙を使用して、栗原木工所(組子の建具制作)が組子と和紙のデザイン建具(玄関引き戸及び室内障子)を試作した。
 

4)普及促進活動

低温乾燥したときがわ産スギ材(彩の香りスギ)をアピールするため、九州大学准教授の清水邦義氏に依頼して、設計者・施工者・一般ユーザーを対象とした低温乾燥した木材の健康効果に関する講演会を開催した。
 また、既に木の家づくりをしたOB会員、これから木の家づくりを考えている新規の顧客に向けてプロモーション活動を行うため、今回開発した低温乾燥したスギ材を使用した組子と和紙の建具のパンフレットを作成した。

◯パンフレットの概要
・目的 :一般消費者向けのプロモーション活動(見学会、住まいの相談等で使用)
・成果物:A4版、両面4色、24ページ、500部

5)報告書の作成

検討結果を報告書にまとめ、企画開発ワーキングにて報告会を開催した。
 

組子の新しいパターンの開発

「キニナル建具(木・気...)」


建て主参加の組子づくりの試行


親子で挑戦


手漉き和紙のテクスチャーを感じる

 

事業実施により得られた効果

地域企業の連携体制の見える化
今回の取組により、地域内でつながりが希薄であった事業者のコラボレーションによる新商品の開発という、地域企業の連携体制の一つの姿が見えるようになり、今後の地域連携の試金石となった。
 
DIYを取り入れることによる需要の喚
 新型コロナウイルスの感染拡大により生活様式の変更を強いられることで、新たな消費スタイルが生まれると言われており、「モノ消費」「サービス消費」に続く第3の消費として、「DIY消費」が注目されている。生産者が完成したモノやサービスを提供するのでなく、「半完成品」を提供して消費者がひと手間加えて消費するものである。このDIY消費の本質的な価値提供の可能性として、消費者自身が学習しスキルをあげることで、より「大きな満足を得られる」ということにある。
 令和3年度に並行して実施した建て主家族を対象に試行した「組子に挑戦、住まいに彩を!」(別途事業)は、親子で組子を組み立て、それを建具にはめ込んで“only one”の家づくりに生かすという主旨のイベントで、建て主の満足度も高く評価を受けた取組で、参加者からは大きな評価を頂いた。
 
若手デザイナーの参加によるジュニア世代への訴求
伝統的な組子も和紙もそれそのものの存在感が大きく、そのデザインは和の雰囲気を強く発信する。この点は強みでもあり弱みともなる。つまり、若い世代の生活スタイルに馴染みにくいという弱みである。そこで、今回は、職人の技と若手デザイナーのコラボレーションにより、洋風の生活様式にも違和感のないモダンなデザインを追求することとした。企画開発プロセスでは建具職人とデザイナーの間で試行錯誤が繰り返されたが、試作した建具は、若い世代に対し訴求力のあるものができたと考えている。
 

今後の課題と次年度以降の計画

今後の課題

1)ときがわ産の低温乾燥木材のブランド化

新型コロナ感染のまん延により空気の質を始め、健康に関する関心が高まるなか、本年度はときがわ町産の低温乾燥したスギ材を「彩の香りすぎ」と命名し、設計事務所及び工務店向けに記念講演会を実施し好評を得た。今後は、住宅関連事業者に向けて木材の香り成分の健康効果に関する情報の発信を図り、ときがわ産の低温乾燥木材のブランド化を図っていくことが課題である。
 また、一般消費者向けには「彩の香りすぎ」を使用したときがわ町のふるさと納税返礼品の開発などにより、認知性を高めていくことが必要である。


2)住宅の新築及び改修に伴う需要開拓

本会では、これまでにときがわ産のスギを使用した木の家の新築や改修のサポートをしているが、こうした建て主を対象にした住宅の新築及び改修に伴う需要開拓は取り組みやすい普及啓発活動である。こうした顧客を対象にした需要開拓を突破口として、伝統的な組子や手漉き和紙を取り入れた建具の魅力を発信し、実績を積みあげていくことを第1段階のターゲットとなる。建具自体の商品力が高まってくれば、逆に建具の魅力を入り口として「彩の香りすぎ」を知って頂き、住まいづくりの需要開拓に結び付けるという戦略も取りうる。こうした点も念頭に、建て主を対象にした住宅の新築及び改修に伴う需要開拓に取り組むことが必要である。

3)海外ニーズの開拓も視野に入れた情報発信

ときがわ町内の手漉き和紙工房では、これまで、伝統的な技術を学びたいという海外からの長期研修の受け入れ実績などもある。今後は、新型コロナの終息後のインバウンド需要も想定し、海外向けの情報発信なども念頭におきながらWEBサイトの立上げなど情報発信ツールの制作を進める必要がある。

次年度以降の計画
1)木の家見学会における普及啓発活動

木の家の新築または既存住宅の木質化改修を希望する一般消費者向けに、ときがわ産のスギ材を使用した木の家の見学会を実施し、その際に本年度試作した建具を展示して普及啓発活動を実施する。

2)住まいの相談に伴う普及啓発活動

本会の東京事務所において実施している住まいの相談の際には、ときがわ町産の低温乾燥したスギ材の健康効果に関する情報を提供している。今回作成したパンフレットを活用して、建具を通して地域の事業者のコラボレーションの魅力を理解して頂くような普及啓発活動を実施する。

3)WEBサイトの立上げ

普及啓発活動の第1段階としては、従来実施している見学会や住まいの相談に伴って行う活動にターゲットを定め、本年度はその際に必要となるパンフレットの制作を行った。次年度以降については、建具自体の魅力を広く発信するため、WEBサイトの立上げを行うことが必要である。