レポート

 

はじめに

全国木材組合連合会 常務理事  森田 一行

この1年間、事業の実施について皆様にご尽力いただいたことをこの場をお借りしてお礼を申し上げる。中間報告会の際にも活発な意見交換をしていただき、地域の特色を生かした非常に多彩な取り組みを広げていこうと、いろいろと工夫をしていただいたことを、今日はそれぞれの団体からご報告をいただく。今回の取り組みを基に、国産材に付加価値を付けた商品の展開と、山元への利益還元の仕組みの構築が一層進んでいくことを期待している。昨年に引き続きコロナ禍でオンラインというかたちの開催となり、ご不便をおかけすることもあるかと思うがご容赦いただきたい。委員の方々、日頃からご指導くださっている林野庁の方々、お忙しい中のお出席をありがとうございます。
目次
 

事例報告

質の高い木育ツールのデザインと
出口戦略としてのEC支援サイトの開設
(NPO法人木づかい子育てネットワーク・株式会社サカモト)

西川材を利用した木育空間のデザイン開発とその設計者養成プロジェクトとして、研修会の開催、新デザインの開発、EC支援サイトの開設の3つに取り組んだ。EC支援サイトの開設では、マーケティング不足や販売方法の問題を解決し、地域材の積極的で高付加価値な利用を促進。DIYや木育関連に製品ジャンルを限定し、新たなアイデアの製品をブランディング。各ショップのECサイトへとユーザーを導く利便性の高いポータルサイトを構築した。アクティブラーニング型研修会(オンライン)には全国から18名が参加。木育デザイナー13名を輩出し、ネットワーク強化の効果を得られた。地域材を活用した「木育の実践を支援する製品」の開発では、オンラインで会議によるアドバイスを経て、参加者8名により試作、改良を行った。完成品を前述のEC支援サイトで紹介することで、小規模事業者と木育マーケット、共に成長が期待できる。
 
 
 

木材張り防火構造外壁の 普及と情報発信
(上川地域水平連携協議会)

2009年設立された当団体は、上川地域の木材関連企業が連携し、上川地域のトドマツを活用した製品開発を行い、トドマツ材を使った住宅づくりの普及に取り組んでいる。2020年、「付加断熱外壁+15mm厚以上の木外装材」が防火構造外壁の国土交通大臣認定が得られたことを背景に、本事業では、高断熱建築物を手がける建築事業者に木材張り防火構造外壁の仕様、施工法、メリットを周知し、利用の促進をはかった。実施項目として、事業検討会の開催、木製品常設展示施設での展示・広報 ・展示会、説明向け技術資料の作成、技術情報誌等による広報および技術支援、展示会等での情報提供を行った。今後は、樹種を選ばない点や、張り方の自由度が高く多様なデザインに対応できる特長を生かし、トドマツ以外の北海道産木材を含めた「道産材外装材」全体を視野に入れた普及を図っていく。
 

 
 

顔の見えるおおさか都心
密集市街地木材循環モデルの開発
(おおさか都市木循環プロジェクト事務局 一般社団法人大阪府木材連合会)

万博を契機に、大阪という都市の木造化を顔の見える形で進めていきたい。そのため山元、川上、川下が一体となり、A材丸太に付加価値を付け、森林と都市の継続的な循環を生み出す新しいビジネスモデルの創出を計画した。大阪産材を付加価値を高く利用する方法として、都市需要があり、かつ歩留まりが高く無駄なく活用できる木取り、製品群の開発を行った。まずは川上・川中、川下(マンションオーナー)のニーズを整理。端材や風倒木を利用した都市シェア商品や都市空間木質備品を試作した。フィールドテストを経て、都市マンションユーザーのビジネスモデルとして、風倒木や端材で製作した屋台のレンタルの収入により、A材ウッドデッキなどのメンテナンス費用をまかなえる可能性が明らかになった。今後は継続的なまちづくりプロジェクトにおいて活用・検証を行う。
 

 
 

コロナ禍における4,5歳園児の木育教育「実践編」
未来の木材事業者及び利用者の育成
(エコーウッド富山株式会社)

木材の専門業者と映像制作会社の5社及び富山県の関係者が協力し、子どもの施設を通じて16園705名のこどもたちに「木育」を体験してもらった。森の役割や植物に関心を持ってもらうため、3つの行事を企画。ひとつは絵本「もりはすごいなあ」を園児が製本した後、読み合わせるというもの。2つめは、園児に描いてもらった木と花を、杉板パネルに印刷し、園内に飾ってもらった。3つめは木の質感・香り・木目・節を認識してもらうため、サンドペーパーで積み木を磨き、絵を描いてもらった。指導者の負担軽減のため、手順説明のDVDを制作し各園に配布。終了後、聞き取り調査によるアンケートを実施し、9割以上の園で楽しんでいたという回答を得られた。また、協議会での意見を参考に木工作家の協力を得て考案したオーナメントなど、A材を活用した商品を開発。今後ワークショップやネットショップでの販売につなげる。
 

 
 

林業木材起点で、地域の力を強くする
川上~川下、行政、他産業が連携した 産地・地域のライフスタイルをリデザインする
(株式会社古川ちいきの総合研究所)

弊社ではここ数年、大阪を紀伊半島の始点として、北山、吉野、高野山を三重点地域に定めプロジェクトを進めてきた。今年度事業では、高野霊木のブランド力強化と製品展開のブラッシュアップを図ることとした。製品開発として、生活空間に馴染むミニ仏壇と、高野山の世界観を表す衝立・仏具飾り棚を試作。その他製品も開発・検討中である。既設のWEBサイトは、ストーリー性を強化してリニューアルを行った。計画していた高野山ツアーはコロナ禍で実施が難しかったため、オンラインツアー動画制作に切り替え、計5本を制作した。今後は、高野山ツアーの定期的実施により、高野霊木製品購入への導線をつくり、高野山真言宗系列寺院、信徒の販路への製品販売、ペット葬ビジネスへの展開をはかる。また、新大阪に全国各地の林業産地の空間体感を訴求する、ショールーム機能を兼ねたコミュニティスペースのオープンを予定している。
 

 

ときがわの低温乾燥材・組子・和紙による
デザイン性の高い建具の開発と普及
(特定非営利活動法人木の家だいすきの会)

当団体は「森に緑を、住まいに木を!」を理念に、木の家づくりを通して奥武蔵の森の保全を目指すNPOである。埼玉県ときがわ産木材の低温乾燥技術が完成し、令和元年度より実用化したことを受け、本事業では、健康効果の高い木材の香り成分の漏出が抑えられた、ときがわ産低温乾燥材を用いた建具開発を行った。地域の伝統技術である、組子と和紙の技術を取り入れ、デザイナーとも連携。若い世代や洋風の住まいにも合うデザインで、消費者が最後のひと手間を加えられるものにすることで、DIY消費に対応した住まい手参加型の商品とした。事業を通して地域企業の連携体制が見える化され、DIYによる需要の喚起の可能性が見えたことは成果であった。今後はさらにブランド化を進め、住宅の新築及び改修に伴う需要開拓、海外ニーズの開拓も視野に入れた情報発信を行っていく。
 

 
 

セーザイゲーム
A材普及リーダー養成プログラムの開発と実施
(熊野林星会)

A材の普及への寄与が期待できる大人たちに、製材の奥深さや面白みを伝える「セーザイゲーム」を、これまで内輪のイベントのみで行っていた。本事業では、これをより多くの人に利用しやすくするため、三重大学やゲーム開発会社の協力を得てブラッシュアップに取り組んだ。紙製だったツールを熊野産ヒノキにかえて、小道具類もヒノキで製作。ゲームのプログラム中に木育プレゼンを組み込み、木取りの実際を、製材の様子の動画視聴。施工事例などを示して説明を行う。高校生に向けたプログラムでは、ゲーム後の座学への興味が高まる効果が見られた。また、発信と集客を行うため、セーザイゲームのプロモーション動画を作成。ホームページを制作し紐付けた。今後はスタッフを育成し、多くの地域でゲームと木育プログラムを実施していく。それにより、各地域の製材リテラシーを上げ、リアル企画への参加へとつなげる。
 

 
 

広葉樹 “WOOD WALL ART プロジェクト”
高付加価値壁面装飾の普及拡大
(特定非営利活動法人みなみあいづ森林ネットワーク)

南会津町地域は森林面積が92%を占め、広葉樹素材生産量全国1位である。優良広葉樹の減少と外国産材流入による林産業の衰退を解決するため、小径木材や原板の使いみちを見直し、流通させて地域経済を循環させることが本事業の目的である。そのため、広葉樹の魅力を増進し利活用を推進できるプロジェクトとして、高付加価値な壁面装飾「Wood Wall Art」を展開している。昨年度、デザイナーとともに製品を開発。今年度事業では製品のブラッシュアップとプロモーションを行った。普及啓発のため、ホテルや役場4箇所に実機を設置。SNSページの開設とともに動画を公開し、WEBサイトにリンク。縮小版を木育製品に加工する展開を試みた。今後は適切な製造・コスト算出方法等を検証し、より簡単に受注できる仕組みを構築。ECサイトを利用したキット販売や、デザインシミュレーションシステムの導入を検討している。
 

 
 

総評

それぞれの努力の成果を大変興味深く拝聴した。コロナ禍においても、皆様が独自のサプライチェーンをつくられているのは非常に頼もしく感じた。人とのつながりという点では、木材関係者に限らず、多様な業界とつながってネットワークを広げ、木材利用の裾野を広げていただいた。インターネットなどを活用し最大限動いていただいたが、最終利用者との接点においては制限が多かったことと思う。今後コロナが収まれば、これまでのフラストレーション晴らし、最終利用者との接点を増やして感触を確かめ、どんどん改良を重ねていただきたい。本日は大変ありがとうございました。
 
林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室
木材製品調査班 課長補佐  高木 望

令和3年度当初予算 「顔の見える木材での快適空間づくり事業」の事業計画を見る