大館北秋田地域林業成長産業化協議会

令和4年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

大館北秋田地域林業成長産業化協議会

事務局所在:秋田県 出材地:秋田県

事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 

実施概要

実施団体の説明
 大館北秋田地域林業成長産業化協議会(以下、「協議会」)は秋田県大館市を範囲(図-1)として、大館北秋田地域の林業・木材産業の成長産業化の実現に向けた活動を行っている協議会です。
 平成29年度~令和3年度に林野庁補助事業「林業成長産業化地域創出モデル事業」に取り組み、産学官連携による森林資源の循環利用やサプライチェーン構築に関する事業を実施したことで、素材生産量、再造林面積、苗木生産量等を増加させることができたほか、“忠犬ハチ公”を通じて防災協定を締結している「渋谷区」と連携し、大館市産秋田スギを同区の公共施設へ供給するなど、都市部等への“地産外商”に取り組んできました。

 
図-1 位置図
 令和4年度より、「林業成長産業化地域創出モデル事業」の事業成果を活かした地域の更なる発展、他地域への横展開を図るため、協議会の会員として新たに大館市内の「住宅事業者」や「建築設計事業者」などが加入したほか、特別会員として「鹿角市」および「小坂町」が加入するなど、会員数が令和3年度末の35会員から76会員(令和5年1月現在)に増加しています。
 これまで取り組んできた“地産外商”に加え、地域内の住宅や公共・民間の建築物への地元産材の供給体制構築に向けた“地産地消”に取り組むことで、木材の安定的な需要を創出するとともに、山元への利益還元に寄与し、更なる林業・木材産業の成長産業化を目指して活動しています。
 
事業の目的
<取り組みテーマ>「秋田スギDLTの試作及び利用拡大・普及」
<事業の背景・目的>
 大館市では令和3年度より木材の利用の促進に関する8つの施策をまとめた「大館市木材利用促進計画(図-2)」を施行しており、産学官連携による木材の地産地消および地産外商の取り組みを通じて、秋田スギの需要拡大を目指しています。
 秋田県内における県産材の用途は、令和2年度実績で住宅建築等の製材用が41%、合板用が46%、チップ用13%となっており、合板用が最も多い状況である。今後、県北地域で大型製材所の稼働が予定されており、県産材の需要拡大及び安定供給体制の構築が期待される中、中小地場の製材工場等においては、多様なニーズをくみとり、多品目を供給できる体制整備が求められています。
 製品の優位性を向上させて、収益性を有する「地場競争力」を高めることで、山元への確実な利益還元につなげるため、付加価値製品として注目を浴びるDLTDowel Laminated Timber/木ダボ接合積層材/図-3)の活用による取り組みを実施しました。
 
図-2 大館市木材利用促進計画 概要版
図-3 DLT
 
事業内容・結果
(1)秋田スギDLTブース等試作事業【地産地消】
■概要:DLTを活用した打合せスペース等の試作
<事業内容>
 大館市では、森林経営管理制度の施行に伴う森林所有者への森林の経営管理に関する意向調査の実施により、森林所有者の来庁機会が増加していることから、秋田スギが活用された打合せスペースを試作し、協議会事務局(大館市役所三ノ丸庁舎)へ設置、当該スペースでの面談により、木材のPRを図るだけでなく、森林所有者自らの森林整備等への意識向上につなげることを目指します。また、WEB会議システムによるオンライン打合せの機会が増加する一方で、パーソナルスペースが少ないことから、秋田スギ・DLT活用によるWEB会議専用ブースを試作します。同庁舎には観光まちづくり法人が入居しており、観光関連企業の来庁機会も多いことから、観光面での秋田スギPRにより交流人口の拡大を目指します。
<結果等>
秋田スギDLTブース(図-4)
設置場所: 大館市役所三ノ丸庁舎2階
(秋田県大館市三ノ丸)
設置数: 1基
寸  法: W2,355×D4,343×H2,300
使用材料: DLTパネルA 105×1,380×1,185
DLTパネルB 105×1,680×1,185
DLTパネルC 105×480×1,809
DLTパネルD W2,100×H1809
※DLTバリエーションデザイン壁
DLTパネルE 105×2,250×2,090
窓枠(集成材)
土台・根太・柱・梁・羽柄材
フローリング
使用樹種: スギKD、ナラ(フローリング)、欧州ブナ(DLTダボ)
図-4 設置状況
秋田スギDLTモクキューブ(図-5)
設置場所: 大館市役所三ノ丸庁舎2階
(秋田県大館市三ノ丸)
設置数: 1基
寸  法: W1,020×D1,200×H1,850
使用材: DLTパネルC 105×990×1,800
DLTパネルD 105×1,020×1,200
DLTパネルE 105×1,020×1,200
デスク(構造用合板) 910×1,820×24
使用樹種: スギKD、欧州ブナ(DLTダボ)
図-5 設置状況
広葉樹DLTテーブル・スツール(図-6)
設置場所: 大館市役所三ノ丸庁舎2階
(秋田県大館市三ノ丸)
設置数: テーブル2台、スツール9台
サイズ等: テーブル W720×L1600×H735
スツール W300×L1600×H445
使用樹種: クリ、ナラ、ヤマザクラ
その他: 組立は事務局員対応(DIY)
図-6 広葉樹DLTテーブル

(2)DLT利用普及研修(木材加工・住宅事業者・設計関係者向け)【地産地消】
■概要:DLT利用の利点や性能に関する研修会を開催
<事業内容>
 令和4年度より協議会の会員として新たに大館市内の「住宅事業者」や「建築設計事業者」などが加入しており、DLT利用の利点や性能に関する研修会を開催することで地域内需要の確保を目指します。なお、参加者へアンケートを行い、DLT普及に向けた課題等をまとめるものとします。
<結果等>
題名: 顔の見える木材での快適空間づくり事業報告
及びDLT研修会
日時: 令和4年12月13日(火)午後1時半~4時
会場: 大館市北地区コミュニティセンター
別館2階 多目的室(秋田県大館市有浦)
人数: 12人(行政、木材加工、建築、学識経験者等)
内容: 顔の見える木材での快適空間づくり事業説明、DLT説明・製造実演(図-7)など
図-7 製造実演の様子
●アンケート結果(DLTについて/抜粋)
・内装に強みがあるので、長所をさらに伸ばす手法や見せ方に期待します。
・接着剤使用せずに手作業で組立てられ、すぐ使用できるのが良い。接着剤使うと一昼夜の硬化期間が必要なので。

(3)秋田スギDLT製品販売促進事業【地産外商】
■概要:木材製品展示会等出展による秋田スギやDLT製品の展示・紹介
<事業内容>
 木材製品展示会への出展により、秋田スギやDLT製品の販売促進を図ります。
<結果等>
①ジャパンホーム&ビルディングショー2022 ふるさと建材・家具見本市(図-8)
開催日: 令和4年10月26日~29日
会 場: 東京ビッグサイト(東京都江東区)
主 催: 一般社団法人日本能率協会
来場者: 会場全体   12,235人(主催者報告)
出展ブース   116人(名刺交換人数)
職 種: ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、デザイン・建築設計、行政、研究機関、建材メーカー、IT関連 など
図-8 出展ブース
②SDGs Week EXPO「エコプロ2022」:森と木で拓くSDGsゾーン(図-9)
開催日: 令和4年12月7日~9日
会 場: 東京ビッグサイト(東京都江東区)
主 催: 日本経済新聞社
来場者: 会場全体   61,541人(主催者報告)
出展ブース      84人(名刺交換人数)
職 種: 自動車メーカー、ビルダー、研究機関、家具・什器メーカー、建材メーカー、建設業者、環境団体、電気事業者 など
図-9 ミス日本みどりの女神来訪
③みなとモデル二酸化炭素固定認証制度木材製品展示会(図-10)
開催日: 令和4年12月8日~9日
会 場: 札の辻スクエア(港区)
主 催: みなとモデル事務局(港区環境課)
来場者: 会場全体  200名程度(主催者報告)
出展ブース  19名(名刺交換人数)
職 種: 行政、木製玩具メーカー、木材関連会社、メンテナンス関連会社など
図-10 出展テーブル

(4)秋田スギ×DLTワークショップ(企業向け)【地産外商】
■概要:都市部企業等を対象とした秋田スギやDLT普及化に向けたワークショップ開催
<事業内容>
 都市部企業等を対象としたワークショップ(研修・加工体験等)を開催することで、都市部企業や大館市と交流のある渋谷区等で秋田スギやDLTの利用例増加を目指します。なお、参加者へアンケートを行い、DLT普及に向けた課題等をまとめるものとします。
<結果等>
①“山とつながる”ローテク木質素材「DLT」製造実演&DLTショールーム見学会(図-11)
日時: 令和4年12月5日(火)午後3時~5時半
会場: 長谷萬ビル1階会議室
(東京都江東区富岡)
人数: 16人(木材関連会社、ゼネコン、ハウスメーカー、新聞社、行政など)
内容: 大館北秋田地域林業成長産業化協議会の取り組みについて、DLTについて、DLTショールーム見学、DLT製造実演 など
図-11 DLTショールーム見学
●アンケート結果(DLTについて/抜粋)
  • DLTの仕組みや特性が理解できました。内装材、パネル材、含水率、めり込み、金物なし、接着剤なし、製造が容易、丸みタイプなどの意匠のバリエーション、B材活用やリユースでなるべく木材をチップにしないことができる商材である点など。
  • DLTは建築以外にも土木資材や道路用設備、仮設作業所などにも使えるのではないか。1工場での生産数は少なくても、その汎用性から数多くの中小事業者が取り組めば大きなうねりになる。低コストでの量産化と迅速な横展開のための戦略が必要と思う。
  • 森林所有者へ適切な対価を戻して次世代の森を育むことを、明確に意図した取り組みであること。仕様などの概要。実物を観て知ることができた。
  • 機会をみつけて、非住宅の内装・家具での利用デザインを考えてみたい。
②『地域を越えた秋田スギ活用・“山とつながる”ローテク木質素材「DLT」』説明交流会 in BRIDGEHEAD(図-12)
日時: 令和5年1月19日(木)午後5時~6時
会場: パナソニックブリッジヘッド
(東京都港区東新橋)
人数: 14名(建築家、木材関連会社など)
内容: DLTについて、DLTサンプル紹介、大館北秋田地域林業成長産業化協議会の取り組みについて など
図-12 説明会の様子
●アンケート結果(DLTについて/抜粋)
  • 化粧材としてだけではなく、構造材、不燃への対応など認定の取得に期待したい。全てオーダーメイドでなく、商品を絞ることによりコストが下がるとおススメしやすい。
  • 価格帯として高額であるとのことで、共感を得ながら採用を狙うとお聞きしました。その場合、使ってみたいと思わせる意義や憧れを抱かせる事例は必要だと思います。
  • 不燃材と比べれば、価格競争力も出ると思います。不燃対応でないのなら、もう少し価格は押さえていただきたいです。

(5)秋田スギ×DLTワークショップ(一般・木育関係者向け)【地産外商】
■概要:住宅、木育施設、保育施設等の秋田スギやDLT普及化に向けたワークショップ開催
<事業内容>
 一般の方にもDLTについて認知していただくことを目的に、DLTの特徴や都市部での利用例の紹介等によるワークショップを開催します。
<結果等>
題名: 木育ワークショップin東京おもちゃ美術館
日時: 令和4年12月13日(火)午前・午後
会場: 東京おもちゃ美術館1階研修室
(東京都新宿区四谷)
人数: 午前の部 8人(一般、IT企業、保育士など)
午後の部 8人(一般、コンサル、保育士など)
内容: 大館北秋田地域林業成長産業化協議会について、DLTってどんな材料??、DLTミニスタンドを作ってみよう!(図-13) など
図-13 DLTスタンド作成の様子
●アンケート結果(DLTについて/抜粋)
  • 接着剤や鍵を使わない地球や人に優しい製法だと知り、今後どんどん需要が高まるといいと思えた。
  • 余す事なく木材の有効活用を視野に入れた取り組みだという事が改めて認識出来た。
  • ワークショップの作業自体は5分内で終わり、子どもから大人まで楽しめるワークショップだと思いました。また、ダボは現在海外産で、国産化に向けて動いているということをきけて、とても興味がわきました。
  • 釘や接着剤を使用しないので人と環境にやさしい。秋田杉を無駄無く利用できる。DLTスタンド作り、簡単でとても良いワークショップでした。家に持って帰ると家族も「おしゃれで素敵~」との声。
  • DLTパネルを実際に使って、楽しく学べました。秋田杉の香りでとても癒やされました。スマホスタンドが、玄関のオブジェになりました。今後も、ワークショップ等を通して、多くの人に伝えてください。
  • DLTというものを知らなかったので、この様な手法があることを知れてよかったです。
  • 低質材を意匠材としても活用できることが面白いと思いました。木の形を活かした自然な丸みのあるデザインが特に素敵でした。
 

事業実施により得られた効果

 本事業では次の4つの期待される効果を設定し、事業に取り組みました。
期待される効果1 地方・都市部連携による「秋田スギ」と「DLT」のマーケット拡大
事業実施により得られた効果
●展示会出展や説明会開催により「秋田スギ」と「DLT」の認知度向上につながった
・「秋田スギ」の名称を見て展示ブースに寄っていただく来場者が多かったほか、説明会やワークショップでのアンケート結果からもDLTの理解度が深まったことが伺えました。
期待される効果2 民間企業との連携化
事業実施により得られた効果
●協議会活動や秋田スギ・DLTの周知を図ったことで新たな企業等とのつながりができた
・来場いただいた企業より打診があり、当該企業のオフィス兼ショールーム(パナソニックブリッジヘッド/図-14、15)で説明会を開催することができました。
図-14 会場外観
図-15 会場内観(DLTサンプル設置)
期待される効果3 製材歩留まり・価値歩留まりの向上による山元への利益還元化
事業実施により得られた効果
●DLTの特性を活かし在庫材の有効活用につながった
・秋田スギDLTブース・モクキューブの設計当初はスギラミナ厚さ30mmを使用する予定でしたが、製材工場側から売れ残って天乾状態となっていた在庫材(図-16、17)について相談を受け、在庫材のスギラミナ厚さ25mm(KD・モルダー加工後:21mm)を活用しました。
図-16 天乾状態となっていた在庫材
図-17 在庫材モルダー加工後
期待される効果4 秋田県産材の需要拡大
事業実施により得られた効果
●秋田スギDLTブース・モクキューブが“地域材ショールーム”として機能化
・来庁される森林所有者や民間事業者へ地域材の利用事例として紹介するほか、協議会事務局(大館市産業部林政課)と同フロアに入居している観光法人への来客時にDLTブースを活用していただくなどで来庁者より好評を得ています(図-18、19)。
図-18 打合せの様子
図-19 会長(大館市長)利用体験
 

今後の課題と次年度以降の計画

<今後の課題について>
今後の課題1 DLT利用用途の拡充(製品開発)
・利用側(建築家等)のアンケート結果にもあるとおり、化粧材としてだけではなく、構造材、不燃への対応などについて検討が必要と考えられます。
今後の課題2 DLT販売方法
・現状の価格帯では採用が難しいといった指摘もあるため、使ってみたいと思わせる意義や憧れを抱かせるようなDLTの特徴(歩留まり向上・山元への利益還元)や川上の取り組み(再造林、素材生産等)を伝えながら販売していく必要があります。
今後の課題3 DLT製造拠点の整備
・前述の課題2と関連し、現状製造拠点が1箇所のみであるため、製造トライアル等により製造拠点の増加を図り、販売価格の低コスト化を図る必要があります。

<次年度以降の計画について>
計画・取組1 秋田スギDLTの継続的な広報普及活動
・秋田スギDLTリーフレット配布、協議会ホームページでの発信やイベント出展等により継続的な広報普及活動を行います。
計画・取組2 秋田スギDLT利用事例の更なる創出
・多くの方が目に触れるような場所での秋田スギDLT利用事例の創出を図ります。
計画・取組3 地域内でのDLT製造トライアル
・協議会関係者によるDLT製造体制の構築を目指します。