びわ湖・淀川流域協議会

平成29年度 工務店等と林業・木材加工業の連携による住宅づくり等への支援事業

びわ湖・淀川流域協議会

実施概要

 本事業では、全国的な課題となっている合法木材や認証材に対する理解の浸透、JAS製材規格の認知度向上とJAS製品の普及促進を図ると同時に、流域材の付加価値向上に取り組み、以って、流域材並びに国産材の需要拡大を図ることを目的に活動を展開した。具体的には、(1)流域材の付加価値向上に向けた商品開発(2)JAS製材の認知度向上と普及促進(3)エンドユーザー・プロユーザーに対する普及啓蒙活動という、3本の柱を軸に活動を実施しており、それぞれの内容は次のとおりである。
 
(1)流域材の付加価値向上に向けた商品開発
 当協議会の主な活動範囲が、京阪神地域という大都市圏を抱えるびわ湖・淀川流域であることを鑑み、マンション等の非木造住宅に暮らす方々、賃貸物件を利用されている方々を想定した商品開発を実施。具体的には、現場で求められる商材、需要側のボトムアップで生み出される商材を提案できるという、協議会の垂直連携の体制を活かし、設計施工業者の意見を踏まえ、木口スリットの羽目板と簡易施工型フローリングの開発、特殊な吸着テープを用いたリフォーム方法の検討に取り組んだ。特に、簡易施工型フローリングの開発では、四面にメス実加工を施し、雇い実でお互いを連結させるという独自性を取り入れると同時に、裏面のカルプ素材にもこだわり、一定程度消音効果が期待できるものを採用した。このように協議会で検討を重ねたことで、既存商品には無い特徴を備えたオリジナル商品を生み出すことができた。また、吸着テープを用いたリフォーム方法の検討については、これまで電子機器や医療の分野で使用されていた素材(材自体に粘着性が無いにも関わらず、超微細な吸盤構造によって高い吸着性能を発揮する素材)を木材に応用するという新たな試みであった。
 いずれの取り組みも、手軽に国産の無垢材を生活に取り入れることができる簡便性のある商材の提案を心がけ、(3)に示す普及啓蒙活動でエンドユーザーに提案し、流域材の付加価値向上を試みた。
木口スリットの
羽目板
(京都府産材)
簡易施工型
フローリング
(京都府産材)
吸着テープを用いた
リフォーム方法の検討

 
 
(2)JAS製材の認知度向上と普及促進
①流域材を用いたJAS製材品の試作
 会員相互の意識の向上と、協議会としてJAS製材品の普及啓発活動に取り組むため、流域材を用いたJAS機械等級区分製材品を試作。この試作では、平成29年8月にSGEC認証を取得した大阪府森林組合の取り組みに着目し、SGEC森林認証材である大阪府産のヒノキを用い、CoC認証のチェーンも繋ぐことで、SGEC森林認証材の普及啓発に用いることができるJAS機械等級区分製材品とした。
 
②JAS製材品に関する普及啓発資材の作製
 JAS機械等級区分製材品の試作後には、展示用躯体の製作、JAS製材品をPRするラベル、動画、展示パネル、冊子等の作製に取り組み、③の研修会や(3)に示す普及啓蒙活動で活用した。なお、制作したJAS製材品の普及啓発動画については、インターネット上に公開し、会員以外の幅広い方々が利用できるよう配慮した。
H29.9/30-10/1
木と住まいの大博覧会
@京都パルスプラザ
JAS製材展示躯体

 
H30.2/16-2/18
木と住まいの大博覧会
@東京ビッグサイト
JAS製材展示躯体
JAS製材品ラベル
H29.11/25
水と森の感謝祭
研修会
H30.1/17
岐阜県立森林文化
アカデミーでの試験
H30.2/16-2/18
木と住まいの大博覧会
グレーディングマシン


<動画URL>

    JAS紹介動画      https://www.youtube.com/watch?v=pca0q8h_NMw


    JAS紹介動画(簡易版) https://www.youtube.com/watch?v=8OvLnD4D_mg


    流域材紹介動画(簡易版)https://www.youtube.com/watch?v=g0KH9cZSddM
 
③JAS製材に関する研修会の開催
 機械等級区分製材品の特徴をプロユーザー等に訴求していくため、平成29年9月と11月に、JAS規格に関する基礎知識を学んでいただく研修会を開催。さらに、機械で測定された曲げヤング係数と実際の曲げ強度の関係を実感していただくため、平成30年1月に岐阜森林文化アカデミーでの実大破壊試験を行う勉強会ツアーを開催。あまり目にする機会のない実大破壊試験の様子に、設計施工業者からも非常に参考になったとのコメントを多数頂くことができた。なお、この試験では、流域材を用いたJAS機械等級区分製材品を試験体として活用しており、いずれの等級も等級別に定められた5%下限値を上回っていることを確認することができた。

<研修会実施一覧>
年月日    場所    対象者 概略
H29年 9月30日~10月1日 京都パルスプラザ 「木と住まいの大博覧会」ご来場者(一般消費者、製材加工業者、建築設計施工業者、行政、教育機関等)
計20名
木と住まいの大博覧会の会場内にて、JASに関する研修会を実施。
(9/30、10/1の両日各1回開催)
H29年11月25日 ナイス株式会社滋賀市場 素材生産者、製材加工業者、木材流通業者、建築設計施工業者、行政(京都府、滋賀県、和歌山県)
計40名
ナイス株式会社滋賀市場にて、協議会主催による「水と森の大感謝祭」を開催。この中でJASに関する研修会を実施。
(午前・午後の2回開催)
H30年 1月17日 岐阜県立森林文化アカデミー 素材生産者、製材加工業者、木材流通業者、建築設計施工業者、行政(滋賀県、和歌山県)
計42名
岐阜県立森林文化アカデミーにて、JAS機械等級区分製材品の実大破壊試験を行うと共に、アカデミーの吉野教授より、JASに関する講義を実施いただいた。
 
(3)エンドユーザー・プロユーザーに対する普及啓蒙活動
 協議会として、流域ブランドをエンドユーザー・プロユーザーに伝え、流域材の差別化を図ると同時に、国産材や地域材に理解ある方(ファン)を増やすために、無垢材に触れて直接その良さを感じていただけるような取り組みを実施。
 具体的には、協議会としてエンドユーザー・プロユーザー等が集まる展示会等に出展し、(1)や(2)で企画・開発した商材や資料を用いた普及啓蒙活動を行った。その概要は下記一覧表のとおりであるが、残念ながら当初予定していた「水都おおさか森林の市」については、台風の影響により中止となってしまった。しかし、その一方で、京都大学で行われた学術的なシンポジウムで発表の機会をいただくなど、幅広い層の方々に、効果的な活動を展開することが出来た。
 さらに、平成30年2月には、エンドユーザー等にも分かりやすくJAS機械等級区分製材品の特徴を伝えるため、グレーディングマシン実物を用いた実演を行った。

<普及啓蒙活動実施一覧>
年月日     場所    対象者 概略
H29年 9月30日~10月1日 京都パルスプラザ 「木と住まいの大博覧会」ご来場者(一般消費者、製材加工業者、建築設計施工業者、行政、教育機関等) JAS機械等級区分製材品を用いた躯体を展示すると共に、JAS、森林認証(FSC、SGEC)に関するパネル展示と冊子の配布を実施。
H29年10月22日 毛馬桜之宮公園 「水都おおさか森林の市」ご来場者(一般消費者等) ※台風21号の影響により開催中止
H29年11月25日 ナイス株式会社滋賀市場 「水と森の大感謝祭」ご来場者(一般消費者、製材加工業者、建築設計施工業者、行政、教育機関等) 流域材のJAS機械等級区分製材品とそれを活用した躯体を展示すると共に、JAS、森林認証(FSC、SGEC)に関するパネル展示と冊子の配布を実施。
H29年11月30日 京都大学
百周年時計台記念館国際交流ホール
シンポジウム「次世代の森林・木質資源と木の住まいを考える」ご出席者(製材加工業者、木材流通業者、建築設計施工業者、行政、教育機関等)
計170名
シンポジウム「次世代の森林・木質資源と木の住まいを考える」のポスターフラッシュにて流域思考と取り組み事例を紹介すると共に、会場内にてポスター展示を実施。
H30年 2月16~18日 東京ビッグサイト 「木と住まいの大博覧会」ご来場者(一般消費者、製材加工業者、建築設計施工業者、行政、教育機関等) 流域材のJAS機械等級区分製材品とそれを活用した躯体を展示すると共に、JAS、森林認証(FSC、SGEC)に関するパネル展示と冊子の配布を実施。
木と住まいの大博覧会の会場内に実物のグレーディングマシンを展示し、測定の様子を再現すると共に、JASに関する動画を上映。さらに、飯田工業(株)の方に講師として終日常駐していただき、解説を行っていただいた。
H30年 2月24日 ナイス株式会社大阪営業所 「大阪住まいの大感謝祭」ご来場者(建築設計施工業者等) 流域材のJAS機械等級区分製材品とそれを活用した躯体を展示すると共に、JAS、森林認証(FSC、SGEC)に関するパネル展示と冊子の配布を実施。
 

事業実施により得られた効果

 本事業で取り組んだ(1)から(3)によって、下記のとおり、一定程度の成果を挙げることができたと考えている。特に、今年度注力したJAS製材品(機械等級区分製材品)の認知度向上と普及促進については、プロユーザー・エンドユーザーに対して機械等級区分の内容、無垢材のEW(エンジニアードウッド)の存在、品質が「表示されている」ことの重要性を訴求することが出来た。また、一年間の取り組みの中で、木材需要の拡大に対する数値的な実績を示せたわけではないが、前述のとおり、JAS製材品をPRするラベル、動画、冊子等のツールを製作することが出来ており、今後はエンドユーザーの学習ツールになると同時に、プロユーザーの提案ツールとしての活用が期待されるところである。
 さらに、川上から川下までのネットワーク、相互連携・産官学水平連携という機能を有する協議会の特徴を活かし、プロユーザー・エンドユーザーを問わず、幅広い層にアプローチ出来たことも大きな成果であったと考えている。


 

今後の課題と次年度以降の計画

 流域材の付加価値向上に向けた商品開発については、企画検討に時間を要してしまい、商品の生産販売体制の構築には至らなかった。ただ、(3)の普及啓蒙活動で行った商品の展示では、プロユーザー・エンドユーザー共に反応が非常によく、今後も商品販売に向けた取り組みを継続し、誰もが身近に無垢材の良さを感じていただける商品として確立させたいと考えている。また、JAS製材品の普及においては、今年度の成果を踏まえ、提案力を強化し、さらなる認知度向上と普及促進に努めていきたい。
当協議会では、次年度以降も流域全体の繋がりを拡大することで、産業や地域交流が盛んになり、地域経済の活性化に寄与できるような活動を展開する予定である。加えて、消費地の工務店が多数参加している協議会という組織力を活かし、会員が社会的貢献度の高い流域材、JAS製材品を使うことで、他社との差別化を図り、流域材のブランド化推進とその需要拡大に貢献したいと考えている。