公益財団法人島根県西部山村振興財団

平成29年度 工務店等と林業・木材加工業の連携による住宅づくり等への支援事業

公益財団法人 島根県西部山村振興財団

実施概要

 今回の事業は、広葉樹の活用に関して大枠を組み立てた昨年度の当該事業の課題を踏まえて、無垢材の材料化の完成を志向し①広葉樹の製品製造の根幹となる高品質の材料化の完成②そのことの普及によって、地域の枠を越えて国産広葉樹製品の品質向上につなげる③広葉樹無垢材を活用した地産地製の参入機会を広げることにより、国産材の新たな用途開発を広く普及することを目指した取組である。
 
燻煙熱処理の効果検証
1.調査目的
夏期に伐採した原木を土場に一定保管する方法として、燻煙熱処理により、虫、カビ、変色菌などの丸太への侵入を一定程度防ぐことが可能か、可能であればどの程度の効果があるかを検証した。
 
2.調査方法
2-1 樹種
 コナラ、ホオノキ、イタヤカエデを調査原木とした。

2-2 原木の調査(燻煙熱処理前)
 樹種ごとに2つのロットに仕分け、一方を燻煙熱処理用、他方を無処理用とした。燻煙熱処理前にすべての原木の径級、材長を測定した。さらに、虫害、菌害、材面割れの発生について目視により調査した。虫害については、材面に発生した虫穴個数を計測した。菌害については、材面における被害面積により5段階に分けた。材面割れについては、割れの長さをセンチ単位で計測した。
写真左/丸太をヒモで4分割し 写真右/材面割れの長さを測る


2-3 燻煙熱処理
 燻煙熱処理用の原木を(協)ヴァーテックスの燻煙庫にて燻煙熱処理した。燻煙熱処理は間けつ運転とし、日中のみ燃料(製材端材)を燃焼し、炉内温度70~80℃に上昇させ、夜間は燃材を投入しないため、炉内温度は低下した。この運転を4日間繰り返した。

2-4 原木の調査(燻煙熱処理後)
 すべての原木について、虫害、菌害、材面割れの発生について目視により調査した。調査方法は燻煙熱処理前と同様とした。厚板材にだら挽きしたのち、樹種ごとに処理材と未処理材について、虫害、菌害、変色及び割れの状況について取りまとめ、効果の有無を検証した。
 
3.まとめ
 丸太の燻煙熱処理は、カシノナガキクイムシ等の加害を受けた虫穴が認められるコナラ丸太等については、材内部まで材温が上昇することにより殺虫効果が認められるので有効と考えられる。一方、燻煙熱処理温度条件によっては、材面割れが発生するため、未処理材と比較して歩留まりが低下することから、好ましくない。変色菌の発生については、製材後の状況から鑑みて、保存性の極めて低いトチノキや特に低いブナは、原木を伐採・搬出後、速やかに製材し、人工乾燥を行ったがよいと判断される。その他の樹種についても、燻煙熱処理効果が明確に認められないことから、夏伐丸太を屋外土場に一定期間保管するための方法として必ずしも有効とは判断できず、下の写真のような屋外の風通しの良い屋根付ストックヤードで極力、直射日光や雨にあてない保管方法が望ましいと思われる。

 
厚板の乾燥方法の検討
1.目的
広葉樹厚板の人工乾燥は困難とされているが、これをテーブル天板やウッドデッキ材などに使用することによって、付加価値の高い製品になることから、広葉樹各種厚板の人工乾燥方法について検討した。樹種はクリ、トチノキ、ブナとした。
 
2.試験方法
2-1 製材、初期含水率の測定
 クリは厚さ45mm、トチノキ、ブナは厚さ50mmの厚板材に製材し、試験体の初期含水率を全乾法で測定した。

2-2 乾燥スケジュール
 乾燥スケジュールは「木材の人工乾燥 改訂版(公益社団法人 日本木材加工技術協会)」の国産広葉樹のスケジュール表を参考に作成し、これに基づき乾燥を実施した。作成にあたっては、島根県農林水産部の中山茂生調整監、オークヴィレッジ社の西崎英二氏らに意見を求めた。

2-3 結果
 クリ材については、屋外で施工するデッキ材を想定し、目標の仕上がり含水率を12%としたが、実際には15%となった。若干の曲がりや反り、ねじれは発生したものの、狂いは少なく、材面割れも無かったことは概ね適切なスケジュールによるものと考えられ、今後はより乾燥初期の含水率低下がより進むような乾燥スケジュールに改善を試みたい。
写真左/養生後のモルダー加工 写真右/モルダー加工後のクリ厚板

 トチノキについては、伐出後の原木を(協)ヴァーテックスの燻煙庫にて燻煙熱処理を行った。その後、コンクリート土場において2~3カ月間保管して、10月に耳付厚板材に製材した。
 クリ材と同様に人工乾燥スケジュールを作成し、これに基づき乾燥を実施した。使用した乾燥機は5m3入りの中温蒸気式乾燥機で、桟積み上部に重しとして鋼材を載せ、厚板の狂いの抑制を期待した。試験体について毎日重量を測定して、初期含水率と重量から求めた推定全乾重量により、人工乾燥途中の含水率を算出した。
写真左/トチノキの製材 写真右/トチノキの乾燥

 トチノキの保存性は極めて低いという評価(日本木材加工協会発行「日本の木材」)を確認していたが、製材時にすでに変色菌による変色が認められていた。発生を防ぐには伐採搬出後、屋外保管、燻煙処理は行わず、速やかに製材、人工乾燥を行うほうが望ましいといえる。含水率は目標の8%に対し、仕上がりは8.4~9.5%に仕上がった。内部割れは無く、幅反りも小さい仕上がりとなった一方で、全試験材の含水率について見ると、心材部が15%程度を示す厚い板もあり、若干の風速不足が生じていた可能性も認められた。
 ブナについては、伐出後の原木を(協)ヴァーテックスの燻煙庫にて燻煙熱処理を行った。その後、コンクリート土場において3カ月間保管して、10月に耳付厚板材に製材した。
クリ、トチノキ材と同様に人工乾燥スケジュールを作成し、これに基づき乾燥を実施した。
全試験材59枚について、高周波式木材水分計HM-520により仕上がり含水率を測定し、乾燥状況を確認した。目標の仕上がり含水率は8%とし、乾湿球温度差は最大で28℃とした。木材乾燥機制御盤内に取り付けてあるインバーターにより室内循環ファンによる風速の調整が可能であることから、材面割れを考慮し、通常は60Hzであるが、今回は乾燥開始から74時間を40Hz、その後の149時間を45Hzにより運転を行った。イコーライジングは全試験材の含水率が極力均一になるように37時間行った。
 仕上がり含水率は8.8~9.9%に仕上がった。試験体についてバラツキの少ない仕上がりとなった。一方で全試験体について見ると幅反りやねじれが目立ち、乾湿球温度差が28℃になったあたりから狂いが大きくなった様子であった。このことから、人工乾燥時間は延長するが、乾湿球温度差は20℃までとし、時間をかけてゆっくり仕上げていく方が望ましいと思われる。
写真左/全乾法による乾燥後の含水率測定 写真右/ブナ厚板の人工乾燥
 
成果の発表
 11月20日、島根県浜田合同庁舎大会議室において開かれた、平成29年度島根県中山間地域研究センター試験研究成果発表会で、取組事例報告「浜田の広葉樹活用プロジェクト」として発表した。林業・木材業関係者、森林組合、市県行政関係者、新聞社、テレビ局等報道関係者等約100人の来場者の中、取組状況について、資料により報告した。   写真/成果発表会