糸魚川商工会議所

令和4年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

糸魚川商工会議所

事務局所在:新潟県 出材地:新潟県

事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 

実施概要

糸魚川商工会議所― 緑でつなぐ未来創造会議について
 糸魚川商工会議所は新潟県の最西端に位置し、人口39,767人(R5.1.1現在)が暮らす糸魚川市の経済団体です。糸魚川市は石灰石が取れることから、それを主原料とした窯業や化学製品製造業と建設業が盛んな地域です。
 近年の糸魚川市では「働き手不足」、「地域外へヒトやカネの流出」などの問題が顕著に現れるようになってきており、多くの企業が課題として声を上げるようになりました。
 しかし、人手不足に悩む企業が個社でこれらの問題に立ち向かうには限界があります。そこで、糸魚川商工会議所がハブとなって地域の事業者が様々な課題を解決するために立ち上げた事業が「糸魚川産業創造プラットフォーム」(以下、PF)です。
 PFでは、個社では解決できない課題に対して、各社の強みを持ち寄って解決を図ることを目標としており、その企業間連携の中で様々なプロジェクトチームが生まれました。
 緑でつなぐ未来創造会議-Midori Mirai Meeting Itoigawa (以下、3M)はそのプロジェクトチームの一つです。チームテーマは、「糸魚川市の主要産業である建設業と、糸魚川市の総面積74,600haの87%を占める森林資源を組み合わせてモノ・ヒト・カネの地域経済循環を生み出す」です。
 日本全体の課題と言えるかもしれませんが、糸魚川市は豊富な森林資源を有していながらも、住宅の建設、公共工事等を輸入木材に頼っておりどうしてもその部分でキャッシュアウトを生んでしまっていました。そこで3Mはその流れを変えていくため、糸魚川の杉にスポットを当てて活動に取り組んでいます。今までに取り組んだ内容としては、杉材の重ね合せ梁による横架材の研究や市民向けの森林体験イベントの開催、地元木材の使用促進を目指した糸魚川独自の住宅基準(糸魚川住宅基準モデル ISSH構想※イッシュ)の検討などがあります。
 そして今回、顔の見える木材での快適空間づくり事業では、糸魚川独自の住宅基準であるISSHの本格運用に向けて「糸魚川住宅基準モデルのオープンソース化 」「糸魚川住宅基準モデルの見える化」 「業界関係者へのセミナー 」「糸魚川住宅基準モデルのPR」の4つの事業に取り組みました。
 
糸魚川住宅基準モデルのオープンソース化について
 本事業の取り組み前、概略を決めるにとどまっていた「糸魚川住宅基準モデル」(以下、ISSH)構想をより具体化し、幅広い普及活動に取り組めるように基準内容や設計事例を取りまとめたテクニカルブックを400冊作成しました。
 ISSHは「糸魚川産木材の使用量」、「許容応力度計算等による構造計算の実施」、「隙間相当面積(C値)1.0c㎡/㎡」を共通基準として、更に断熱性能の達成度によって「先導基準」、「推奨基準」、「標準基準」に認定していく糸魚川独自の住宅認定規格です。
 認定住宅を増やし、地元住宅の地材地建と高性能化を進めることで地域経済の循環、エネルギーの排出抑制と社会保障費の抑制の3点の解決を図ることを旨としています。
 概略の決定時、地元産木材の使用量を「1㎡あたり0.06㎥以上」として進めていましたが、今回の検討を進めるにあたり、0.06という数字は「構造材」から地元木材の消費を促すものであり、それではせっかく消費者にISSHを選んでいただいて糸魚川の木を取り入れてもらっても隠れてしまい、宣伝効果や満足感を得ることは難しいのではないかという意見がでました。そこで、「内外装材」から取り組める0.03にすることで、見た目や感触から糸魚川の木を気に入ってもらいながら使用量を増やす方針へ変更することとなりました。
 加えて、話し合いを進める中で、「基準を示されてもどう取り組めば良いのか難しいのではないか?」という意見もあったため、2棟の建築例を掲載し取り組みの参考になるようにしています。
 また、この取り組みを行っている中で新潟県が「雪国型ZEH」という県独自に住宅基準を発表しましたが、本認定をクリアできれば対応できるようになっています。
 今後はこのテクニカルブックを初版として400冊作成し3MやISSHに参加した企業に配布し、自社での社員教育や消費者に向けた営業活動に参考にしていただく予定です。
テクニカルブック表紙
設計例
 
糸魚川住宅基準モデルの見える化
 図式的な設計例だけだと木を外壁等に使用した住宅とはどういったものかをガルバリウム鋼板などが一般的な現在で、関係者や消費者に向けてイメージ、説明が難しいとの意見がありました。そこで「百聞は一見に如かず」の観点から設計例の3Dモデルを作成しました。
 ユーザーに数字的な内容を理解していただき、選んでいただくことも大事ですが、数値が優れていても感覚的に良いと感じてもらえなければ選定の土俵に上がることもできないため、一目見て「木を使った家ってこんな感じなんだな」と分かってもらえるように準備しました。
設計例3D図
 
業界関係者へのセミナー
 ISSHを現在の3M参画企業以外にも紹介し、参画者を増やすことを目的に、市内工務店、建設業関係者などを対象に「高性能住宅に関する基本知識と具体的な施工勉強会」と題した勉強会を座学編と施工編の2本立てで企画、実施しました。
 施工編の実施に際し、断熱施工の見本を作成し実物でも説明することで実施効果を高めました。
 
座学編
日 時 令和4年12月14日(水)
会 場 ヒスイ王国館 新潟県糸魚川市大町1丁目7−11
対 象 糸魚川市内の工務店や建設関係事業者
参加者 35社 59名
内 容 緑でつなぐ未来創造会議とは? ㈱カネタ建設 猪又直登(3M座長)
ISSHとは? ㈱石田伸一建築事務所 石田伸一
省エネ住宅の必要性について ネイティブディメンション一級建築事務所
鈴木 敦
 
施工編(同日2会場開催※同内容)
日 時 令和5年1月18日(水)
会 場 ラック㈱ 新潟県糸魚川市横町5-2-18 ㈱三和 新潟県糸魚川市上刈6-3-1
対 象 糸魚川市内の工務店や建設関係事業者
参加者 ラック会場 12社 19名 三和会場 14社 23名
内 容 高性能住宅の断熱施工の実習 マグ・イゾベール㈱ 小川健太
 
12月14日座学編の様子
1月18日施工編の両会場様子
作成した施工見本
 
糸魚川住宅基準モデルのPR
 糸魚川住宅基準モデルのPRについては、糸魚川市民に向けてISSHをどのようにアピールや普及をさせていくかを考え、その準備として「コンセプトブック300冊の作成」と「ISSHの特設Webページの作成」を実施しました。これら製作物に関しては、特に糸魚川市民に向けて発信していくものとなるため、わかりやすさをを重視しています。

 
コンセプトブック
 
 
 糸魚川木材の活用を促すのは勿論、住宅の高性能化でいかにキャッシュアウトが減るのかを数字的にもわかるようにしています。
 また、既存の3Mのサイトからジャンプできる特設Webページの作成も行い、住宅を建てたいと検討している消費者が情報を取得できる準備を行い、ISSHに取り組む事業者は、コンセプトブックやWebページから消費者に対してスムーズに説明を行うことができるようにしました。

 

事業実施により得られた効果

  • ISSH規格の内容をとりまとめることができた結果、市との認定制度化のスケジュールの確認等を大幅に進めることができました。
  • 令和5年度からISSH認定制度運用開始に向けて市民への周知する環境が整えられました。
  • 地域の関係事業者に対して「緑でつなぐ未来創造会議」及び「ISSH」の内容を周知することができました。

今後の課題と次年度以降の計画

3Mが川上から川下までのハブとなって連携を強化していくことによって、林業事業者の伐採量や製材事業者の供給量の増加を図っていければと思います。
 
R5.4月~ 糸魚川市民に向けたISSH認定制度のPR開始
6月~ ISSH認定制度運用開始
未定 地域関係事業者のスキルアップセミナー第2弾