吉弘製材所

令和4年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

吉弘製材所

事務局所在:福岡県 出材地:福岡県

事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 

実施概要

実施団体
  • 代表者     吉弘 辰一
  • 設立     昭和35年6月
  • 所在地     〒839-1201 福岡県久留米市田主丸町長栖594-1
  • 取得資格     福岡県木連第2312号 登録 合法木材認定工場
  • その他     代表者が以下役職を兼務(2022年6月時点)
    • 久留米田主丸財産区議会 議長
    • 浮羽森林組合 副組合長
    • 浮羽郡チップ生産協同組合 副組合長
「川上から川下の様々な関係者が互いに連携しながら、個々の得意業務を担当する事業継続体制(右イメージ図)」の構築につなげるべく、本事業については、当社がコーディネーター役となって、域内事業者及び(生活者との接点となる)工務店や物販・飲食店、大学等を段階的かつ具体的に巻き込みながら企画や試作、試行などを展開した。
 
事業の目的
本事業は、コロナ禍を経て加速する「移動販売やワーケーション、キャンプなどにおけるモビリティ需要の拡大」や「おうち時間の充実にともなう天然素材のDIYやインテリアの人気」といった市場環境変化を踏まえ、以下2つの目的のもとで企画・実施した。
(A) 顔の見える木材を使用した新製品開発による新たな需要を創出すること
(B) それら新製品などを活用したワークショップ等を木育プログラムとして事業化し、顔が見える木材を用いた家や家具、雑貨などに対する中長期的なファンづくりにつなげること
 
事業内容・結果
①地域材モビリティBOX 【森箱】の開発・試作
  • 福岡県産の一般流通材を用いて、軽トラックに着脱利用する木製モビリティBOX【森箱】を試作した。
  • 試作した【森箱】について、木育プログラム(2回)や物販イベント(1回)への出動を通じて磨き上げや作業/物販拠点としてのオプションパッケージの試作を行い、「森の道具箱仕様」を完成させた。
  • 今次開発した【森箱】については、最上級の仕様(ハイエンドモデル)と位置づけ、森とまちをつなぐ取り組みに関わる事業者が、単独若しくは共同して制作・運用すること等を想定した「受注生産による事業化」を目指す。
  • なお、【森箱】の事業化に向けた体制づくりについては、取り組みの最終版において漸く事業化の方向性が定まったこともあり、事業継続体制を作り上げるところまで進めることはできなかった。
〈 森箱 / 森の道具箱仕様 〉
●スマートなデザイン、並びに地域材を板倉工法で組み上げた上質感
●軽トラックの荷台に専用固定金具で固定する着脱式
●床下に60㎜の隙間を確保し、フォークリフトを用いた着脱を容易化
 
(外寸)
H:1,835㎜×L:1,890㎜×W:1,400㎜
(重量)
約320㎏
(素材)
本体:福岡県産スギ材
屋根:ステンレスフレーム+テント
(主な装備)
側面:カウンターと大きな跳ね上げ窓
水回り:小型シンク×1
電源:外部コンセント×2
 
(参考)木育プログラムの拠点として製材所内に展開した【森箱】
〈 森箱 / 作業/物販拠点以外の用途への展開案 〉
②森とまちをつなぐ新たな木材ビジネスの開発
(a)木っ端製品群・ブランドの開発
  • 消費者視点(=ローカルのあたりまえは、まちのプレミアム!)のもと、デザイナー/ディレクターが森林や木材産業の現場の“隠れた資源”の調査活動を行った。
  • 新製品開発における下記コンセプトをまとめた。
『 福岡都市圏との近接性を活かし、もり(山元)とまち(生活者)が“日常的”につながることを通じて、生活者の「かわいい」等の反応の裏にあるニーズを紐解き、自分達らしい・自分達ならではの魅せ方(編集)で製品を開発し続ける 』
 
(b)事業として成立する木育プログラム(ワークショップ等)の開発
  • 大人の生活者、なかでも “女性” をメインターゲットと位置付け、“学ぶ”のではなく“感じる(そして行動変容につながる)”ことを目指したプログラムづくりに取り組んだ。
  • 下記会議及び木育プログラムの試行(下記③参照)を通じて、【A】まち(消費地)で実施するプログラムと、【B】もり(山元)で実施するプログラムを制作した。
(ア)開発会議の開催
第1回:令和4年9月10日@オンライン
 プログラムのプロトタイプを制作し、その試行概要(役割分担や場所)を協議
第2回:令和5年1月11日@浮羽森林組合 ※本取り組みの報告会として開催
 プログラムの試行結果を共有し、次年度以降の展開について意見交換
(イ)磨き上げ会議の開催
第1回:令和4年10月26日@大濠テラス(福岡市中央区)
 「まち(消費地)で実施するプログラム」の磨き上げを行った(専門家1名を招聘)
第2回:令和4年11月1日@久留米大学(久留米市)
 プログラムにおける多様な視点の導入について研究した(専門家1名を招聘)
第3回:令和4年11月13日@ららぽーと福岡(福岡市博多区)
 他団体の主催イベント等における展開について研究した(専門家招聘せず)
第4回:令和4年11月29日@吉弘製材所(久留米市)
 「もり(山元)で実施するプログラム」の磨き上げを行った(専門家2名を招聘)

〈 制作したプログラムの概要 〉
  【A】
まち(消費地)のプログラム
【B】
もり(山元)のプログラム
コンセプト 衣食住を通じて、日々の生活や森林・地域のことを考える機会を提供する 森林等における体験を通じて、森林や地域とのつながりを築く機会を提供する
環境づくり 店舗内装飾や【森箱】活用によって、森林の豊かさ、大切さを実感してもらえる環境を整える 【森箱】等を用いて、森林や木材産業の「現場」に特別な空間を整える
第1部
(マインドセット)
森林の物語(紙芝居) 森林の物語(紙芝居)
第2部
(メインコンテンツ)
日常生活と森林をつなぐアイテムの制作ワークショップ 自ら調達した素材を用いたアイテムの制作ワークショップ
第3部
(サブコンテンツ)
森林・地域の恵みをいただくティータイム 多様な視点からの気づきを得るティータイム
主な実施主体
まちの物販/飲食店や工務店
(森林組合等と連携)
森林組合や域内事業者
(まちの物販店等と連携)
 
③【森箱】を用いた木育プログラムの試行
  • 試作した木育プログラムの試行(5回。まち2回、もり3回)や物販イベントへの参加(1回)を行った。なお、そのうち木育プログラムの試行2回(まち1回、もり1回)と物販イベントへの参加において、試作した【森箱】を出動させた。
  • 試行やイベント参加を通じて、試作した【森箱】や木っ端製品群・ブランド、木育プログラムの磨き上げを行うと共に、参加者観察やインタビュー、アンケートなどを通じて、本取り組みを通じた地域/木材製品に対する理解促進やファンづくりの可能性を検証した。
◇ プログラム試行1:令和4年10月26日@大濠テラス(福岡市中央区)
 「まち(消費地)で実施するプログラム」を試行。参加者7名/生活者
◇ プログラム試行2、3:令和4年11月1、5日@域内山林、製材加工工場、原木市場
 2日に分けてプログラムの一部を試行。参加者18名/学生・2大学
◇ プログラム試行4:令和4年11月13日@ららぽーと福岡(福岡市博多区)
 他団体の主催イベントに参画しプログラムの一部を試行。参加者16名/生活者
◇ 物販イベント参加1:令和4年11月27日@佐賀市
 連携団体の主催イベントに参画し【森箱】のテストマーケティング等を実施
◇ プログラム試行5:令和4年11月29日@域内山林、製材加工工場
 「もり(山元)で実施するプログラム」を試行。参加者11名/生活者、学生
 
 (参考)プログラム試行の様子(まち:10月26日、もり:11月29日)
■「まち(消費地)で実施するプログラム」の試行の様子
  ※左から、第1部:紙芝居、第二部:ワークショップ、第三部:ティータイム
■「もり(山元)で実施するプログラム」の試行の様子
  ※左から、第1部:紙芝居、第二部:素材集め散策、第三部:ティータイム
 

事業実施により得られた効果

(1)新製品開発の効果
「地域材の需要創出につながる新たな事業が始動した」
  • 着脱式の木製モビリティBOXに対する潜在需要を確認することができた。
  • 【森箱】の試作に携わった当社並びに㈱未来工房、㈱アンドローカルズにおいて、今次開発した仕様の【森箱】を用いた事業モデル(案)をとりまとめ、他の新製品開発チームメンバーとの事業化に向けた議論を開始した。
  • また、木っ端製品群・ブランドについても、今回まとめた開発コンセプトに呼応するかたちで、連携団体である㈱アンドローカルズが(独自の取り組みとして)新ブランド『森(フォレス)と』を開発、事業化に着手した。
(2)木育プログラム開発の効果
 「木育プログラムの継続実施及び横展開に向けた展望が拓けた」
  • 木育プログラムの試行を通じて、木育プログラムを通じた地域/木材製品に対する理解促進やファンづくりの可能性に加えて、我々自身の事業変革や人材育成にもつながる取り組みであることを実感した。
  • 当社が中心となって事業モデル(=【森箱】や木っ端製品群・ブランドと木育プログラムを有機的に連動させて展開する事業)の素案をまとめ、木育プログラム開発チームメンバーによる事業化に向けた議論を開始した。
 

今後の課題と次年度以降の計画

(1)地域材モビリティBOX 【森箱】
・課題: 更なる需要拡大を狙うには、大幅な原価低減及び軽量化が必要
・計画: 今次開発した【森箱】を用いた新事業の立ち上げに取り組む
大幅な原価低減及び軽量化を実現した新モデルの開発/事業化を目指す
(2)木っ端製品群・ブランド
・課題: 事業継続体制の構築が必要
・計画: (1)~(3)を組み合わせた事業を展開しながら事業継続体制の構築を進める
地域独自の製品やブランドの開発を検討する
(3)木育プログラム
・課題: コンテンツの充実や収益モデルの確立が必要
・計画: (1)~(3)を組み合わせた事業展開を通じてファンコミュニティづくりを進める
プログラムを継続開催しつつ、参画事業者やコンテンツの充実を進める